優勝争い、クライマックスシリーズ進出争いが佳境を迎えているペナントレースの一方、ファームで爪を研いでいる若手がいる。果たして来季、活躍しそうなファーム選手は誰か。セ・リーグ6球団で有望な若手をピックアップする。
記録は9月17日現在

読売ジャイアンツ

　期待も込めて背番号90を推す。今季育成ドラフト7位で入団したルーキー右腕で、6月7日に支配下登録された21歳の戸田懐生だ。支配下昇格までにイースタン6試合に登板し3勝0敗、防御率3.44。三軍戦でも2試合2勝0敗、防御率1.50と十二分な結果を残した。その後、中継ぎ要員として一軍昇格し、3試合をいずれも無失点。登録抹消後は二軍で主に先発を任され、9月16日の楽天戦(ジャイアンツ)では先発して8回1失点で今季6勝目をマークしている。独立リーグでも2シーズンのキャリアがあり、新人年の経験を糧に、来季は一軍の先発ローテーションを争うことが期待される。

阪神タイガース

　入団当時から右の大砲候補として期待されている存在が井上広大だ。高卒2年目の今季も大きな期待がかけられていた。一軍キャンプにも呼ばれたが、最後にケガで離脱。復帰後は二軍の四番としてチーム最多の9本塁打に50打点を記録。17試合連続安打を放つなど成長を見せていた。しかし、8月終盤に右足脛骨(けいこつ)骨折し現在リハビリ中。だが、今季の成長ぶりから、来季を見据えた場合、一軍で活躍できる可能性は十分にあり、大山悠輔を脅かす存在になれば、チームの攻撃力はさらにアップするはずだ。

東京ヤクルトスワローズ

　高卒ルーキー捕手ながら、すでに一軍デビューも果たしている内山壮真に期待だ。ここまでイースタン68試合に出場し、チーム2位タイの7本塁打。放った安打は49本。つまり、7分の1が本塁打ということになる。フレッシュオールスターでも決勝本塁打を放っており、大舞台でも力を発揮できる。長打力、打撃力は抜きん出たものがある。山田哲人ですら、ルーキーイヤーの2011年はイースタンで5本塁打だった。本人は捕手として守備面での課題を多く挙げるが、独り立ちできるようになれば古田敦也のような捕手になることも夢ではないだろう。

中日ドラゴンズ

　プロ5年目、9月21日に23歳の誕生日を迎えるから、若手というにはギリギリの年齢かもしれないが、来季の飛躍が期待される強打者だ。一軍でのプロ初本塁打は昨年9月25日の巨人戦(東京ドーム)ですでに済ませている。勝負の年と挑んだ今年は、しかしまだ一軍から声がかからない。ウエスタンではチームトップの9本塁打＆31打点をマークしているのにも関わらずだ。ちなみに90三振もチームで一番多いが、豪快なフルスイングは石垣の大きな魅力でもある。守備は内野ならどこでも守れるという器用さを持っている。来季はぜひとも一軍で見たい選手であり、その長打力でチャンスを切り拓いてもらいたい。

広島東洋カープ

　広島で「来季こそ一軍定着を」の期待がかかるのは、昨年、森下暢仁に続くドラフト2位で入団した宇草孔基だろう。昨秋に死球を受けて右足腓骨手術となった不運もあり、大卒で入って2年間、一軍で通したシーズンはまだない。今季はチームが新型コロナ禍に襲われた5月後半に一軍に呼ばれ、25試合に出場。田中将大(楽天)から打ったプロ初本塁打を含め2発、5盗塁を決めるなど、時折見せる瞬発力には一軍で通用する可能性を感じさせた(７月上旬に二軍落ち）。あとは、それをいかにコンスタントに出せるか。打率と出塁率の安定、盗塁成功率の向上、守備における送球など課題はあるが、きっかけさえつかめば一気に定位置争い参入の可能性も秘める。

横浜DeNAベイスターズ

　ドラフト5位入団のルーキー・池谷蒼大は貴重な中継ぎ左腕として開幕一軍を勝ち取ると、開幕カードで早くもプロデビューを飾った。転機となったのが5試合目の登板となった4月10日の阪神戦(横浜)だった。9回に4番手でマウンドに上がると3盗塁を許し、クイックの課題が露呈。ファームで再調整となった。イースタン・リーグでは32試合に登板し、クイックのみならず自身の投球を見直した。9月に入り、約5カ月ぶりに一軍に再昇格。11日のヤクルト戦(神宮)では2回無失点と一軍での再スタートを切っている。ボールの出所を隠した変則フォームからキレのあるボールを投げ込む背番号53。来季は大きな飛躍を予感させる。

写真＝BBM