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来秋“ドラフト候補”強肩強打の捕手。横浜隼人・前嶋藍に備わる察知する能力

 

2017年以来の秋ベスト8へ


横浜隼人高の主将・前嶋藍[2年]は強肩強打の捕手で、2022年のドラフト候補に挙がる


 司令塔は先々を読んで動く必要がある。マスク越しに視野を広く、全神経を研ぎ澄ます。

 横浜隼人高は藤沢清流高との神奈川大会4回戦(9月19日)で3回を終えて、1対0とリードしていた。4回表、先頭打者に初安打を許した。鋭い三遊間の打球に対し、遊撃手が惜しくも追い付かず、打球が転々とする間に、打者走者は二進。嫌な流れである。ここで、横浜隼人高でマスクをかぶる前嶋藍捕手(2年)は、すぐに察知した。

「練習からも狙っていけ、と。ここは、(バントで)送ってくると確信したので、サインを出しました」

 ウエスト気味のコースを要求した。前嶋は捕球すると、すぐさま矢のような二塁送球。二塁走者はベース手前でタッチされ、あまりの素早さに、帰塁することはできなかった。

 イニング間の二塁送球は1.83秒。遠投110メートルの強肩が、試合の流れを変えた。

 横浜隼人高・水谷哲也監督は「練習からやってきたことを出せた。前嶋が引っ張ってくれた」と、エース右腕・西川雄大(2年)を完封(4対0)へ導いた不動の正捕手を称えた。

 前嶋は中学時代に在籍したオセアン横浜ヤングで、ベイスターズカップ優勝の実績がある。県外の甲子園常連校から熱心な誘いがあったが、熱血漢・水谷監督の指導力に惹かれ、横浜隼人高に進学した。1年秋からレギュラーで「1打席でも、多く回したい」との指揮官の意図から、四番ではなく三番を打つ。相手バッテリーの厳しいマークに遭いながらも、この日もしぶとく適時打で1打点。今秋の新チームからは、部員間の推薦により主将に就任した。水谷監督は「負担も大きくなると考えましたが、クリアしていけるだけものがある」と、全幅の信頼を寄せている。

 チームは2017年秋以来のベスト8進出を遂げた。好きなキャッチャーはソフトバンク甲斐拓也。前嶋は173センチ80キロの右投げ右打ちと、体格に加え、守りでリズムをつくるスタイルにも、共通点を感じる。高校卒業後のプロ入りが目標。あるNPBスカウトは「高校生でトップクラス」と早くも、2022年の候補選手にリストアップしている。

 20日には向上高との県大会準々決勝が控えるが、攻守で前嶋の存在感は増すばかりだ。

文=岡本朋祐 写真=長尾亜紀
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