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週べ60周年記念

盛り上がりつつも暗雲漂う新生ロッテの準本拠地仙台の初試合/週べ回顧1973年編

 

 3年前に創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。バックナンバーを抜粋し、紹介する連載です。定期的ではなく、時々掲載しています。

金田正一監督は言う「お客様は神様です」


表紙は巨人王貞治



 今回は『1973年6月11日号』。定価は120円。
 
 金田正一新監督率いる新生ロッテが、準本拠地の仙台に初めて入ったのは5月21日の午後2時56分だった。この時点でロッテは開幕から31試合を消化し、2位南海には2ゲーム差の首位。さらに言えば、前期65試合中、仙台開催は7試合のみとなる。

 駅からバスで日銀仙台支店前に向かい、そこからパレードだ。沿道を埋めたファンは2万人だったという。

「おばあちゃん、頑張るよ」「坊やもナイター、見に来いよ」「ナイターはちょっと一杯より安いよ」

 誰より大きな声でファンに話しかけ、盛んに握手しているのは、もちろん、金田監督だ。

 握手されたおばあちゃんは、

「もう一度、結婚できるんなら金田さんみたいな人がいいよ。背は高くてスマート。いつもニコニコ笑っているしね」

 と話したと書いてあったが、やや盛っているか。

 パレードのあとは宮城県庁前の野外音楽堂で前夜祭だ。

「お客様は神様です」

 あいさつに立った金田監督は、まずはそう言ってオーバーなジェスチャーで笑いを誘うと、こう続けた。

「その神様に、このような大歓迎を受けて、野球選手冥利に尽きます。何が何でもこの仙台でいい成績を残します」

 ここでまた大声援。この人のパフォーマンス力は神かかっている

 そのあと県営宮城球場に向かい、外観を見て「思っていたよりええグラウンドやないか」と言って笑顔を見せていた金田監督だったが、実際、下に降りると表情が曇った。

 グラウンドは石だらけ、外野の芝もガタガタ。何よりブルペンがない。

 とにかく、「グラウンドの内野に砂を入れ、石をできるだけ拾っておいてくれ」とだけ指示し、この日は球場を離れた。

 試合は近鉄3連戦。22日がナイター、23日はダブルヘッダーだった。

 まず22日のナイター。3万3000人の大観衆が集まり、内野後方には立ち見客も出て当初は大盛り上がり。試合も13対0の完封勝利だったが、気温が11度と冷え込み、大差もあって試合終盤席を立つ人も多かった。

 さらに翌日のダブルヘッダーは寒さに加え、雨。金田監督は大事を取って故障もあったラフィーバーアルトマンを使わず、有藤通世を途中で引っ込め、メンバーを落として挑む。結果は0対12、0対10と連敗だ。

 負けたことに関しては、

「最下位の近鉄相手といっても10戦して10勝は無理な話や。この2敗は近鉄さんにはせめてもの供養や」

 と強がったが、寒さとグラウンドコンデションには参ったようで、

「はっきり言って、この球場でゲームをするのは苦しいな」

 と本音もポロリと出た。ちなみに対近鉄は仙台入りまで7連勝。ロッテは仙台も含め、ここまで喫した11敗中、首都圏以外が7敗と、本拠地ではないので微妙だが、内弁慶チームではあった。

 金田監督と言えば、実弟・留広が日拓のエース格。新聞記者相手ながら「兄が監督をしてるロッテ戦に投げるのは嫌だ。トレードしてほしい」と発言していたことが問題視され、日拓は金田留広に対し戒告処分を決定した。

 では、また。

<次回に続く>

写真=BBM
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