若き力の成長はチームにとって大きな活力となる。シーズンも最終盤を迎えているが、セ・リーグ6球団で今季、最も成長を果たした選手は一体誰なのだろうか。チームに勢いを与えた男たちを取り上げる。 記録は9月24日現在 読売ジャイアンツ
一軍にデビューした昨季、すでにその片鱗を見せていたが、今季は
DeNAからFAで
梶谷隆幸、新助っ人としてE.
テームズを補強しており、同じ左打ちの外野手である松原聖弥は厳しい立場に立たされていた。しかし、梶谷はたび重なるケガでファーム暮らしが続き、テームズはアキレス腱断裂で退団するなど、最終的に外野の定位置(左翼で17試合、中堅で32試合、右翼で39試合に先発)をつかんだ。もちろん、チームの120試合終了時点でキャリアハイの93安打、ホームランも2ケタ10本を放ち、打っても主に一番でアピール。9月22日の
広島戦(マツダ広島)では規定打席に乗せた。実は巨人の育成選手でシーズン規定打席に到達した選手はまだおらず、このまま出場を続け、最終的に443打席をクリアすれば、球団史上初の快挙となる。
阪神タイガース
試合終盤の大事なイニングで、ヒットが打て、走れる選手がいると心強い。島田海吏はまさにそういう選手になった。今季二軍スタートも、63試合に出場し打率.344に盗塁21という圧倒的な数字を残し、後半戦一軍に昇格してきた。打てない日でも気持ちの切り替えができる精神力が身につき、技術面では低く強い当たりを打つことを意識してから、内野を抜ける安打が増えた。一軍では9月21日の
中日戦(バンテリン)の9回表、2対2同点の場面に代打で先頭打者として登場し内野安打で出塁すると、2球目に盗塁を成功させ、進塁打で三塁へ。最後は犠飛で生還し、勝ち越し点を生み出した。一軍では盗塁失敗なしの自慢の足とともに、急成長を見せている。
東京ヤクルトスワローズ
今季、優勝争いができているのは、新戦力に加えて、多くの若手の台頭があったからにほかならない。安定感が光る
高橋奎二や、一番打者に定着した
塩見泰隆はもちろん、四番の
村上宗隆が今も成長を続けている。だが、やはり“最も”成長したと言われれば、奥川恭伸の名前が挙がるのではないか。プロ1年目の昨季、奥川はデビュー戦となった最終戦(対広島、神宮)で3回途中5失点という結果に終わった。だが、今季はストライク先行の投球で、強打者たちを手玉に取っている。14試合に先発してチーム2位の7勝、QSは10試合だ。「フォームが固まってから、結果が出るようになりました」と奥川。下半身主導のフォームで、どの変化球も同じ腕の振りで投じられている。これからの成長も楽しみだ。
中日ドラゴンズ
昨年までのプロ3年間はほとんど二軍暮らし。しかし今年はプロ4年目にして初めての開幕一軍切符を勝ち取ると、ここまで二軍に落ちることなく、一軍の戦力として活躍している。武器は50メートルを5秒8で走るスピード。特に一塁から三塁のベースランには定評がある。チームに足りない機動力の部分で高松の存在は大きく、僅差の終盤、高松が代走で出場するだけで球場がどっとわく。ただ、目標はもちろんスタメン定着。そのためには「すべての面でレベルアップしなければならない」と言う。飛躍のシーズンとなったこの一年をシーズン完走で終わりたい。目標は「一番・セカンド」だ。
広島東洋カープ
昨年までは一軍通算で打ったヒットは1本のみ。それが今季は、規定打席到達こそ難しいものの、レギュラーを手にし、3割前後の打率を残しているのだから、大変身といっていいだろう。広島の3年目、林晃汰だ。昨年までは、持ち味の長打力を見せたいあまり、知らず知らずのうちにフォームを崩すことがあったが、今季は結果も出て、本来の逆方向にも長打の出る打撃を発揮。東京五輪期間中のエキシビションマッチでは調子を崩したが、自らの力で乗り越え、9月7日の中日戦(マツダ広島)の第3打席から9日の同戦の第4打席までは、1敬遠を挟み、球団歴代2位となる8打数連続安打も記録。大きな自信を得たシーズンになったはずだ。
横浜DeNAベイスターズ
4年目の外野手、楠本泰史が持てる才能を発揮し始めた。ドラフト8位入団ながら秀でた打撃センスは誰もが認めるところ。しかし、入団以来、DeNA外野陣の高いカベに跳ね返されてきた。
筒香嘉智(現MLBパイレーツ)、梶谷隆幸(現巨人)、
桑原将志、
佐野恵太、
オースティンらとのポジション争いの前に、まずは代打でアピールせねばならない。この「1日1打席の勝負」で昨年までは結果が残せなかったのだが、今季は代打での打率が.333とチーム一の勝負強さを見せる。シーズン通算打率も.304、2本塁打と上々の数字で、佐野、オースティン、桑原に続く、4番目の外野手として虎視眈々と定位置をうかがう。
写真=BBM