週刊ベースボールONLINE

川口和久WEBコラム

新人王候補最右翼となった広島・栗林良吏/川口和久WEBコラム

 

カープの新人王列伝に名を加えるのか


広島・栗林


 サトテルこと、阪神佐藤輝明で確定と思っていたセの新人王争いだが、信じられないスランプに陥り、50打席無安打となっている(9月26日現在)。

 それでも23本塁打、60打点を挙げているのだから並みの新人ではない。ホームラン打者は波が大きいから、一発が出れば、それをきっかけにまた打ち出すこともあるかもしれないが、大きく打率が下がり、新人王レースからは一歩後退というところだろう。

 ほかにはDeNA牧秀悟、現時点盗塁最多の阪神の中野拓夢もいるが、最有力は何と言っても広島の抑え・栗林良吏だ。

 データを見てみると、開幕から42試合に投げ、自責点わずか2で防御率0.43の26セーブ。しかも奪三振率はなんと14.04だ。短いイニングの抑えとはいえ、驚異的な数字だね。

 真っすぐは速いし、フォークもいい。完成度の高い投手で、広島が優勝を争うような状況なら、もっとセーブは増えていただろう。

 ただ、明らかに疲れは感じる。

 俺は解説で25日のDeNA戦(横浜)を見たけど、1アウトを取ったあと、代打のソトに四球を出したとき、「あれ」と思った。確かに一発の怖さはあるが、ソトは絶不調でスタメンを外れた選手だ。その相手にやや逃げのピッチングになっていた。

 そのあと桑原将志にフォークを打たれたが、ほとんど落ちずシュート回転しているだけだった。柴田竜拓の三振はフォークだが、あれはワンバウンドを振ってくれてラッキーという感じかな。関根大気をカットボールでショートフライに仕留めたが、いいときの全球種が勝負球という感じはなかった。

 ただ、捕手のリードかもしれないけど、フォークが今一つと思ったら、それをワンバウンドするくらい低めに投げ、そのあとフォークを意識した打者にカットボールで勝負。新人とは思えぬ百戦錬磨の投球術ではあった。

 昔から広島と言えば新人王だ。津田恒実小早川毅彦、最近では大瀬良大地森下暢仁と言った具合にね。

 これは間違いなくスカウト陣の力が大きい。将来性ある素材を探し出し、口説き落とす。しかも現場がほしがっている戦力だから、すぐ使われ、活躍するという好循環だね。

 新人王にはならなくても前田智徳江藤智ら、さすがと思うスカウトの目で獲得した選手はたくさんいる。

 栗林の新人王の最低ラインは30セーブかな。あと4セーブだから、チャンスさえあれば、あっさりクリアできるだろう。

 ただ、もはやカープにはCSの可能性もほぼないし、栗林はオリンピックでも投げ続けていた。

 これだけ投げたんだから体には間違いなく疲労がたまっている。ピッチャーはどうしてもマウンドに立つとアドレナリンが出て目いっぱいやってしまうけど、来年のことも考えて、あまり無理をさせずにいてほしいなとも思う。9月は登板数も減っているから、ベンチもそれを分かっての起用だったのだと思うけどね(まあ、そういう展開にならなかった、とも言えるが)。

写真=BBM
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング