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FA権取得の中日・又吉克樹 「欲しくない球団はない」と争奪戦の可能性も

 

大学までは無名の存在



 中日の救援陣で最も貢献度が高いのではないだろうか。プロ8年目の又吉克樹は9月26日現在、リーグトップの60試合に登板し2勝2敗8セーブ30ホールド、防御率1.39と抜群の安定感を見せている。7月には国内FA権を取得した。

「又吉の今季年俸4200万円(推定)はチームの日本人選手で12位です。FA宣言した場合は、移籍に伴う金銭、人的補償などが発生しない『Cランク』と見られるので、権利を行使した場合は複数球団の争奪戦になるでしょう。あれだけクォリティーの高い投球を長期間できる投手はなかなかいない。今年はどの球団も救援陣のやりくりに苦労している。又吉を欲しくない球団はないでしょう」(スポーツ紙デスク)

 大学時代まではまったく無名の存在だった。沖縄で生まれ育ち、西原高では内野の控え。1年秋に打撃投手で投げ込んだことでサイドスローとして投球フォームの骨格がつくられたが、直球は最速117キロだった。しかし、飽くなき向上心と強い心が進化させる。環太平洋大に進学すると、社会人・日本鋼管福山時代に2度のドラフト指名を受けたサイド右腕の田村忠義監督(当時)と出会う。恩師から高度な教えを受け、食事も改善したことで身長は180センチまで伸びて、直球は最速144キロと一気にはね上がった。

 大学卒業後、四国アイランドリーグの香川に入団すると、現役時代に広島で活躍した西田真二監督の方針で直球を磨きあげた。右のサイドから繰り出される最速148キロの直球にプロのスカウトも目を見張る。2014年、中日にドラフト2位で入団。独立リーグ出身で現在でも最高順位だ。

 1年目に67試合登板で9勝1敗2セーブ24ホールド、防御率2.21と「勝利の方程式」に不可欠な存在になり、同年から3年連続60試合以上登板と鉄腕ぶりを発揮する。17年はシーズン当初は先発だったが、交流戦明けから救援に戻り50試合登板で8勝3敗21ホールド、防御率2.13。侍ジャパンにも選出されて活躍している。

 18、19年は思うような成績を残せなかったが、投球フォームを修正することで輝きを取り戻した。セットポジションで投球動作に入る際に、顔の前にグラブと右手を上げ、グラブを右手で一度叩いてから投げていたが止めた。流れるような投球動作にすることで躍動感が戻り、投球のテンポも良くなった。

イメージチェンジを果たして


 プロの世界で生き抜く上で、イメージチェンジも功を奏している。従来は直球にスライダー、シュートと横の揺さぶりで勝負していたが、カットボール、シンカー、チェンジアップを覚えたことで縦の変化や緩急差による奥行きで翻弄できるようになった。右のサイドは左打者から見やすい軌道のため不利とされているが、又吉は左打者の懐に食い込むカットボールを果敢に投げて凡打の山を築く。被打率は右打者が.189に対して、左打者は.241。打者の左右関係なく起用されるのは、与田剛監督の信頼の高さの表れだ。

 防御率1.39は他球団の救援投手と比較すると、そのすごさが際立つ。リーグトップの38ホールドを挙げているヤクルト清水昇が2.65、阪神岩崎優が2.78、巨人中川皓太が2.47。又吉はこの3人より1点以上防御率が低い。中日はクライマックスシリーズ進出が厳しい状況だが、集中力を最大限に高め、1球1球丁寧に打者を打ち取る投球スタイルは変わらない。復活した鉄腕のオフの去就も注目されることは間違いないだろう。

写真=BBM
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