チームの再編・統合を経て

　昨年まで横浜(三菱パワー)、名古屋、神戸・高砂、広島と4拠点にあった三菱重工グループの硬式野球部は、東西それぞれ1チームに再編・統合。さらなる強化を図るべく2021年、三菱重工East(横浜市)と三菱重工West(神戸市・高砂市)として、2つのチームが発足した。

　三菱重工Eastを率いる佐伯功監督(東北福祉大)は過去に8シーズン、三菱重工名古屋を指揮し、2018年の日本選手権で優勝を遂げたキャリアがある。初めてベンチで指揮した都市対抗西関東予選を終えると「なかなか疲れますね(苦笑)。1試合にかかる重さがある」と、率直な感想を述べた。

　三菱重工名古屋が昨年まで戦った東海地区二次予選は、今年で言えば15チームのうち、6チームが本大会への出場権を得られる。第1代表でも、開幕から出場決定まで12日間。敗者復活戦を経て、ラスト1枠である第6代表の決定までは、19日間という長丁場だ。最少で4試合、最多で8試合を戦う可能性がある。心身とも、タフさが求められる激戦区だ。

　一方、西関東地区は代表決定リーグ戦に3チーム(三菱重工East、ENEOS、東芝)が駒を進め、総当たりにより、上位2チームが東京ドームの本戦に出場することができる。最多で2試合で、状況的に一つも落とせない。「一つのミスが命取りになる」(佐伯監督)。今回はリーグ戦(9月14〜16日)で3チームが1勝1敗で並んだため、代表決定トーナメント(9月27〜29日)にもつれた。

　三菱重工Eastは代表決定戦リーグ戦の第2戦(対ENEOS)を制して(4対1)、代表権へ王手をかけていたが、東芝との第3戦を延長11回の末に惜敗(2対3)した。代表決定トーナメントまでの調整期間を、佐伯監督は「変わったことをすることはない。日々の練習の積み重ね」と、粛々と万全の準備を進めた。

　代表決定トーナメント第1戦(9月27日)は、東芝がENEOSに1対0で勝利。三菱重工Eastは東芝との第1代表決定戦（9月28日）を制し、2年ぶり12度目(三菱パワー時代を含む)の出場権を手にした。2対2の9回裏、主将・江越海地(長崎・海星高)がサヨナラ打(3対2)。投げては三菱重工広島から転籍した左腕・本間大暉(専大)が2失点完投。三菱パワー、三菱重工名古屋を含めた3チームの戦力が見事に融合し、結果を残したのである。

着実にレベルアップ

　激戦区・東海、そして、強豪ひしめく西関東。比べることができないほど、都市対抗予選には、それぞれの地区で厳しさがある。選手の手によって横浜スタジアムを舞った佐伯監督は、今回の短期決戦の難しさをあらためて語った。

「ビクビクしていないつもりでも、夜中に目が覚めてしまったり……。西関東では、集中的なストレスがくる……。そんなプレシャーの中で、予選は選手たちの成長の場になります。胴上げ？　毎回、うれしいですが、今回も最高にうれしかったです」

　前日(27日)、近畿地区予選では三菱重工Westが第3代表で東京ドーム切符を手にしていた。「連絡も取り合っていますので、素直にうれしかったです」。重圧が一層かかったのかを聞くと、佐伯監督は言った。

「(Westが)先にJABA京都大会(4月)で優勝し、意識していた時期もありました。ただ、意識しても調子が上がるわけではないですからね(苦笑)」。努めて足元を見つめた。

　三菱重工Eastは春先のオープン戦で、勝てない時期が続いた。公式戦に入ったJABA日立市長杯、九州大会でも予選リーグ敗退。統合チームゆえの難題に直面したが、5月のJABA北海道大会優勝で日本選手権への出場権をつかむと、日に日に団結力を増してきた。日本選手権では4試合を勝ち上がり、準優勝。チーム力をアップさせ、今回の西関東予選では第1代表と、着実にレベルアップしている。

「伸びしろのあるチーム。ここで満足することなく、高みを目指していきたい」。そして、佐伯監督はあらためて、決意表明した。

「三菱重工スポーツチャレンジ元年(マラソン部、ラグビー部、硬式野球部、浦和レッズの強化とスポーツ振興)です。EastとWestが全国の舞台で、存在感を示していきたい」

　目指すはもちろん、都市対抗優勝チームだけが手にできる黒獅子旗の奪取である。第1代表決定戦後は早速、一塁ベンチで、佐伯監督を中心にスタッフミーティング。喜びも束の間、次なる戦いへスタートを切った。

文＝岡本朋祐　写真＝矢野寿明