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過去にはバレンティン、今季は和田康士朗にチャンス! 規定打席未満での打撃タイトル獲得者は?

 

 パ・リーグ打率トップを走るのがオリックス吉田正尚だ。ケガで9月5日から欠場した際に、当初は「欠場が長引いたら吉田の首位打者のタイトルはどうなるのか」が注目された。吉田は9月26日の楽天戦で復帰できたが、実は規定打席未満でも首位打者のタイトル獲得は可能だ(10月2日のソフトバンク戦で右手首に死球を受け、再び離脱の可能性も)。

「野球規則の9・22」によると、首位打者、最高長打率、最高出塁率は、規定打席未満の場合でも不足分を「打数」に加えて再計算し、規定打席到達者トップを上回ればリーグ1位とみなされる。そのため、首位打者と最高出塁率の2つは規定未満でもタイトル獲得の可能性があるのだ。

 では、2リーグ制となって以降で、「規定打席未満で打撃タイトルを獲得した選手」はいるのだろうか?

規定打席未満での本塁打王となったヤクルト・バレンティン


12年のバレンティンは422打席と規定打席未満ながら31本塁打でタイトル奪取


 まずは「首位打者」「最多本塁打」「最多打点」の3項目で、規定打席未満での獲得者がいるのか調べてみた。

●首位打者……0人

 吉田の欠場によってフォーカスされた「規定打席未満の首位打者」だが、入れ替わりの多い二軍ではしばしば起こるものの、一軍ではこれまで誰も記録していない。もし吉田が今季全休だった場合を計算してみると、登録抹消時の打率が437打席376打数127安打、打率.338。この時点では規定に6打席足りないため、この6を打数に入れて計算すると382打数127安打。打率は.332となる。もしシーズン終了時に、.332を上回った選手がいなければ、吉田が首位打者獲得となったわけだ。10月2日現在、リーグ2位の西武森友哉は.315。選手の復帰は喜ばしいことだが、もし大事を取って全休した場合は一軍初の珍事が起こっていたかもしれない。

●最多本塁打……1人
バレンティン(ヤクルト/2012年)31本塁

 規定打席未満での本塁打王はこれまでバレンティンのみ。加入1年目は史上3人目の打率最下位の本塁打王となったが、来日2年目の2012年は日本の野球にも慣れ、シーズン序盤から安打を量産した。しかし7月以降は大スランプで一気に打率を落とし、ケガの影響もあって規定打席には届かず。しかし、持ち前のパワーで本塁打を量産し、2リーグ制以降では初となる規定打席未満での本塁打王となった。1年目は打率最下位の本塁打王、2年目は規定打席未満での本塁打王、3年目はNPB記録の60本塁打をマーク。短い期間にこれだけの記録を生み出した助っ人は他にいないだろう。

●最多打点……0人

 規定打席未満での打点王は残念ながら0人。過去にはバレンティンが規定打席未満での本塁打王になった2012年に、リーグ2位となる81打点を記録したが、トップの巨人阿部慎之助(104打点)には及ばなかった。打席数が少ないとそれだけチャンスが回ってくる機会も少なくなるため、規定打席未満での打点王は相当難しいといえる。

今季は規定打席未満での盗塁王が生まれそう?


代走で数を重ねるロッテ・和田に盗塁王のチャンスが


 次に、「最多安打」「最高出塁率」「最多盗塁」の3項目。これも達成が難しそうだが、果たして過去に何人いるのだろうか?

●最多安打……0人

 安打も出場数が少ないと積み重ねるのが難しいため、これまでに規定打席未満でタイトルを獲得できた選手はなし。例えば、過去にはソフトバンクの川崎宗則が2007年に規定打席未満ながら126安打と奮闘。しかし、この年の安打数リーグトップは稲葉篤紀の176安打で遠く及ばなかった。

●最高出塁率……0人

「野球規則の9・22」でも規定されている最高出塁率だが、首位打者と同じく規定打席未満での獲得者はこれまでに出ていない。ただし、2003年にヤクルトのペタジーニが規定打席未満ながらリーグトップの出塁率.457を記録。不足分を足した場合は出塁率.436となり、規定打席到達者トップの福留孝介(.401)をこ上回るものだった。ところが、2003年当時は、最高出塁率はルールの適用外であったため、タイトル獲得とはならなかった。

●最多盗塁……10人
土屋五郎(国鉄/1951年)52盗塁
山本公士(阪急/1966年)32盗塁
西田孝之(東京/1967年)32盗塁
柴田勲(巨人/1969年)35盗塁
青木実(ヤクルト/1981年)34盗塁
緒方耕一(巨人/1993年)24盗塁
緒方孝市(広島/1995年)47盗塁
赤星憲広(阪神/2002年)26盗塁
藤村大介(巨人/2011年)28盗塁
周東佑京(ソフトバンク/2020年)50盗塁

 規定打席未満での盗塁王は過去10人。他のタイトルに比べると多いが、それでも1950年以降でと考えるとそう簡単には達成できないものだ。昨季は、ソフトバンクのスピードスター・周東佑京が記録。2011年の巨人・藤村大介以来となり、パ・リーグでは史上3人目。また、規定打席未満での50盗塁到達は1951年以来となる大記録だった。

 今季は他にも規定打席未満ながら、3割近い打率やリーグ上位の盗塁数を記録している選手がいる。その筆頭がロッテ・和田康士朗。今季は代走メーンでわずか19打席にもかかわらず、リーグトップタイの24盗塁をマーク。2リーグ時代で11人目の規定打席未満での盗塁王が誕生するかもしれない。

文=中田ボンベ@dcp 写真=BBM
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