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新宿高が目指す「日本一の文武同道」の達成。本大会で早実にコールド負けも「歴史を変えてくれました」

 

23年ぶりに東京都の本大会出場


母校・新宿高を率いる田久保裕之監督[左]と一村幸主将[右]。同校はこの秋、23年ぶりに東京都の本大会出場を遂げた


 東京都立屈指の進学校である新宿高の野球部は「日本一の文武同道の達成」を目指している。1921(大正10)年に東京府立第六中学校として設置された歴史があり、野球部OBには昨春から東大を指揮する井手峻監督(元中日)がおり、就任前には母校を指導していた。

 新宿高は今秋、躍進を遂げた。東京都一次予選2試合を勝ち上がり、23年ぶりの本大会出場を決めたのである。チームを指揮する田久保裕之監督は1998年当時(2年秋)、四番・右翼で、部内における「部長」の役職だった。

 注目された初戦だったが、早実との1回戦(10月3日)を5回コールド(0対10)で敗退している。

「23年前は、翌春のセンバツに出場する駒大高と対戦しまして6回コールド(0対10)。早実さんは強かったです。伝統あるチームとこの舞台で真剣勝負できたことは、私たちにとって財産です」(田久保監督)

 今夏の東東京大会は2014年以来の初戦(2回戦)突破。現チームで主将の一番・一村幸、二番・平林優希、四番・高橋寛太朗(いずれも2年)がレギュラーとして出場していた。新チームでエースの右腕・青柳光祐(2年)も、立正大立正高との3回戦で救援。経験値において、この秋の快進撃の予兆はあった。

印象に残った束になって戦う姿勢


 本大会まで駒を進めた原動力は何か。田久保監督は3つのキーワードを挙げる。

「この代は、真面目でよく練習するんです。(新チーム結成から)2カ月で伸びました。人間性、素直さ、努力。選手12人(2年生6人、1年生6人)、マネジャー2人がここまで連れてきてくれ、歴史を変えてくれました」

 田久保監督は2012年秋、日本高野連主催の「甲子園塾」を受講。当時、講師だった早実・和泉実監督から3日間、多くの指導を受けたという。今回の対戦は恩返しの場でもあった。

「早実さんと対戦するのは、私が3年春の都大会4回戦で逆転サヨナラ負けして以来なんです。私自身も、和泉監督に成長した姿を見せたかったですが……。出直してきます」

 打線は1回表、一番・一村の投手の足下を抜く内野安打1本に抑えられた。早実打線には13安打と打ち込まれたが、守りは1失策と自滅することはなかった。決して派手なプレーはないが、アウトにできる打球を、きっちりと処理し、打線もコンパクトに振り抜くスタイルが徹底。部員14人が、束となって戦う姿勢は印象に残った。

にじませた悔しさ


 主将・一村は悔しさをにじませた。

「絶対に勝つ! という、強い気持ちで臨みましたが、早実さんは強かったです。体の強さ、技術、すべてが違いました。今後も勉強と部活動、それぞれ全力を尽くす『文武同道』を胸に、心身ともレベルアップして、春、夏とチャレンジしていきたいと思います」

 試合後は球場外で、十分な距離を取った上でミーティング。真剣な表情で、反省点を出し合っていた。学習能力がある集団であり、今回の教材を必ず、次なる戦いへ生かしていく。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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