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昨季最下位から首位の快進撃 ヤクルト・高津臣吾監督の人心掌握術に「名将」の声が

 

現役時代は4カ国のリーグでプレー



 2年連続最下位で沈んでいたヤクルトが「セ・リーグの主役」になっている。巨人阪神と熾烈な優勝争いを繰り広げる中、9月中旬からの10連戦を7勝3分で乗り切るなど10年ぶりの9連勝。球団新記録の13戦負けなしの快進撃で首位に浮上した。

「コロナ禍で観客が声援を送れないので、ベンチの声がはっきり聞こえるのですが、一番活気があるのがヤクルトです。リーグトップの破壊力を持つ打線がビッグイニングを作れるので、投手陣が最少失点で切り抜ければ勝てるという強固な信頼関係が築けている。打撃陣は塩見泰隆、投手陣は奥川恭伸高橋奎二の台頭が大きいですが、何といっても高津臣吾監督の手腕が大きい。楽天から戦力外通告を受けた今野龍太がセットアッパーとして大活躍したように、実績関係なく結果を出せば大事な場面で起用してもらえる。チャンスをモノにしたいと、ファームの選手を含めてモチベーションが非常に高いです」(スポーツ紙記者)

 高津監督はヤクルトが黄金時代を築いた1990年代に守護神で活躍したイメージが強い。右サイドから繰り出される伝家の宝刀・シンカーを武器に通算286セーブを記録。メジャーのホワイトソックスでも04年に19セーブを挙げるなど守護神として結果を残し、監督のオジー・ギーエンが「マリアノ・リベラでも連れてこない限り、シンゴは我々にとって最高のクローザーだ」と絶賛するほどだった。

アメリカなど、さまざまな国や独立リーグでプレーした経験が指導に生きている[写真=Getty Images]


 輝かしい野球人生に見えるが、それは高津監督のキャリアの一面しか表していない。日本球界に復帰後はヤクルトに入団テストで復帰し、2年間で計26セーブを挙げるが戦力外通告を受ける。アメリカ、韓国、台湾と渡り歩いた後、独立リーグ・新潟アルビレックスでプレー。日本、米国、韓国、台湾の4カ国のリーグでプレーした初の日本人選手で、名球会会員が独立リーグでプレーするのも史上初だった。

 新たな環境で結果を出すことは簡単ではない。言葉の通じない異国ではグラウンド以外の日常生活でも適応能力が求められる。米国、韓国、台湾でプレーし、独立リーグでもプレーしたことで、その環境に置かれた選手たちの気持ちを理解できるのは指導者として大きな強みだろう。

結果だけで批判しない


 ヤクルトに指導者として復帰し、一軍投手コーチ、二軍監督を経て昨年から一軍の監督に就任。対話を重視する姿勢は変わらず、練習中から選手たちの動きに気を配る。

「最下位に沈んだ昨年で一番悔しさを露わにしていたのが高津監督でした。普段は穏やかなのですが誰よりも負けず嫌い。でも選手を結果だけで批判することはない。寄り添う姿勢で失敗してもチャンスを与える。若手が伸び伸びプレーできるのは高津監督の思いが伝わっているからだと思います。現役時代の恩師・野村克也監督の考えも組み込みながら、『1点をどうやって取り、どうやって防ぐか』にこだわり、選手たちの野球脳が鍛えられている。間違いなく名将ですよ」(スポーツ紙デスク)
 
 チームの精神的支柱である青木宣親、15年のリーグ優勝の味を知る石川雅規小川泰弘中村悠平山田哲人川端慎吾に加え、村上宗隆、塩見、奥川、高橋ら若手の成長株ががっちりかみ合い、チームは生まれ変わろうとしている。高津監督は就任2年目で頂点に立てるか。

写真=BBM
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