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2021ドラフト

千葉学芸高・有薗直輝 ノーアーチで3年夏終戦も、評価高止まりの高校通算70発大砲【2021ドラフト候補】

 

規格外の長打力


千葉学芸高・有薗直輝


 昨秋までに高校通算45本塁打。有薗直輝は2年時から、千葉では名が知られたスラッガーだった。2年夏の5回戦(対市原中央高)では、両翼99.5メートルのZOZOマリンスタジアムの左翼席に飛び込む一発も打っている。

 注目度を高めたのが、今年に入ってからの上積みだ。創部初の優勝を果たした春の県大会終了時点で59本まで伸ばすと、その後の練習試合でも快音を響かせた。通算本塁打は本人が掲げていた目標のとおり、夏の大会前までに70本に達した。

「今年の高校生ドラフト候補は、コロナ禍による活動自粛の影響で、昨秋からの伸び率が少ない傾向がある」というスカウトの見立ても、有薗には当てはまらなかった。東金市にある自校のグラウンドには絶えず、NPBのスカウトが視察に訪れた。あるスカウトは「スイングが鋭く、スケール感があり、将来的には、右の大砲として期待できる」と評す。

 有薗の長打力は規格外だ。ホームベース後方から行う竹バットでのロングティーでも、しばしばボールが両翼93メートルあるフェンスを越える。185センチ95キロと体も高校生離れなら、飛ばす打球も超高校級だ。練習試合では、強豪校のエースも自分の力を試そうと真っ向勝負を挑んでくる。しかし、公式戦ともなれば、そうはいかない。歩かせてもいいとまともなストライクは投げてこない。有薗はホームランを打ちたい気持ちを抑え、ボール球に手を出すことなく後続につなげる打撃を貫いた。

 その結果、今年は春、夏合わせて大会では1本塁打にとどまった。それでも関東大会初戦の2回戦では、プロ注目の関東一高(東京)の市川祐から2安打を放ち、夏は3試合で打率5割をマーク。課題としていた「確実性」も向上した。

軽快な守りに足もある


 大柄な体躯ながら三塁での守備も軽快だ。身のこなしも柔らかく、サード特有の強い打球にも緩いゴロにも対応する。中学時代は主に投手で、昨秋は背番号1を背負っていたとあって送球も力強い。投手としての最速は143キロ。50メートル6秒1と足もある。千葉学芸高の高倉伸介監督は「外野だけでなく、三塁も守れることも評価されているようです」と話す。

 Aシードで臨んだ夏はまさかの4回戦敗退(対千葉黎明高)。「甲子園に出るために千葉学芸に入学した」と言う有薗にとっても「甲子園という全国の舞台で有薗の打撃を見てもらいたい」と話していた高倉監督にとっても、あまりに早過ぎる終幕だった。有薗は6点差の9回二死一塁から、コースに逆らうことなく右方向にヒットを飛ばして好機を広げたが、試合後は負けた責任を一身に背負って涙を流した。

「千葉のスラッガー」は最後は千葉で姿を消した。だが、この悔しさを絶対に糧にする。プロに入って一軍のひのき舞台で“有薗ここにあり”という豪打を見てもらうつもりだ。

文=上原伸一 写真=BBM

週刊ベースボール別冊秋嵐号『2021ドラフト候補選手名鑑』より
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