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2021ドラフト

八王子高・羽田慎之介 異次元の角度から投げる192センチ左腕“和製ランディ・ジョンソン”【2021ドラフト候補】

 

今夏は1球も投げずに終戦


八王子高・羽田慎之介


 149キロ左腕・羽田慎之介は今夏、1球も投げることなく、西東京大会5回戦(対狛江高)で敗退した。2対3の9回裏二死一、二塁。背番号1を着ける羽田は代打で今大会初出場した。左打席から快音を残したものの中直に倒れ、試合終了。左ヒジに故障(骨髄浮腫)を抱え超音波治療などを続けていたが、この日には間に合わなかった。安藤徳明監督によれば、ドクターと綿密な相談の上、勝ち上がれば、準々決勝以降で登板機会があったという。

 主戦投手となった昨秋。富士森高との1回戦、国士舘高との2回戦はともに8イニングを投げ、日大鶴ケ丘高との3回戦は1失点完投勝利。ここで、体に悲鳴が上がる。左ヒジの骨膜炎により、準々決勝(対関東一高)の登板を回避(チームは0対7で敗退)していた。

 安藤監督との話し合いにより11、12、1、2月は体づくりに充てた。体幹トレ、ウエート、走り込みを継続し、今年3月以降にキャッチボールを再開。当初は春の東京大会で復帰予定はなかったが、体重8キロ増(86キロ)で下半身主導のフォームが確立。7〜8割、20球以内、スライダーとカットボールは封印(変化球はチェンジアップのみ)の条件で登板した。

 小平西高との1回戦で自己最速を2キロ更新する146キロ、専大付高との3回戦では149キロ。一躍、ドラフト候補に浮上した。夏へ向けて、羽田は「甲子園で勝つことが目標です!」と2016年以来、2回目の全国舞台へ導くつもりだったが、マウンドで躍動することはできなかった。今春の段階で、複数のNPBスカウトの評価は「(ドラフト)3位以内で消える素材」との声を聞いた。149キロ左腕は「和製ランディ・ジョンソン」の異名があり、潜在能力の高さに、プロ関係者は太鼓判を押していた。

はっきり芽生えた自覚


 羽田の決断が注目されていたが、9月10日にプロ志望届を提出。昨秋の段階から基本的な方向性は決まっていた。安藤監督は言う。

「ケガ多く、指導者側としても『大事に育てよう』『将来があるから』と慎重になる。でも、本人もどこか、甘い部分があった。進路に際しても、大学を経由して、社会人など漠然とした目標に過ぎない。ここであえて、高卒でプロを目指さないかと、言いました。当然、人並み以上の努力をしないといけない。そこで、羽田に物足りなかった厳しさ、自覚が出てきたと思います」

 故障と向き合う苦しい日々だったはずだが、エースとしての責任を忘れずに行動した。今後に生きる時間だった。

「190センチを超えた左投手というのはあまりいないので、自分が確立していきたい思いはある」

 異次元の角度から投げる姿を早く見たいものである。

文=岡本朋祐 写真=BBM

週刊ベースボール別冊秋嵐号『2021ドラフト候補選手名鑑』より
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