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2021ドラフト

西日本工大・隅田知一郎 「1位」指名を待つ最速150キロを誇る大学No.1左腕【2021ドラフト候補】

 

150キロに6色の変化球


西日本工大・隅田知一郎


 目指す数字は「1」しかない。「ドラフト1位でプロに行きたいんです」。「1」にこだわりプロ志望届を提出したのは受付初日の9月1日。「一番乗りを狙って」と一並びでドラフトへの強い思いを示した。

 自身でも「自分じゃなかったみたいだった」と振り返る全日本大学野球選手権の1回戦(対上武大)。リーグ戦で封印していたスプリット、スライダーを解禁し、カーブ、カットボール、チェンジアップ、ツーシームと多彩な変化球を駆使。「変化球は決めて当たり前だと思っているので」と、どの球も決め球として使えるのが強みで、毎回の計14三振を奪った。四番・ブライト健太に許したソロ本塁打1本が決勝点となり、初戦敗退(0対1)に終わった。

 今後の課題は「ストレート」と言う。内角の直球で勝負にいった球が甘く入りスタンドへ運ばれた経験からだ。「変化球が生きるのも直球があるからこそ。力のある球を投げたい」と夏以降はファウルで詰まらせるような力のあるストレートを投げるために遠投や球の回転を意識して練習してきた。この秋もストレートを重視した投球を意識する。

 隅田知一郎の思いに応えるように、NPBのスカウトも熱い視線を送っている。秋のシーズン開幕を1週間後に控えた8月下旬、野球部のグラウンドで行われた紅白戦には10球団、20人を超えるスカウトが集まった。夏の間はコロナ禍で対外試合ができず、リーグ戦前の最終登板となった紅白戦で先発。5回を2安打無失点と、まずまずの投球を見せた。

 迎えた9月4日、長崎国際大との開幕戦は会場の別大興産スタジアムは無観客にもかかわらず、ネット裏だけがにぎわった。12球団25人のスカウトが見つめる中、7回を2安打無失点。自己最速まで2キロに迫る148キロの直球に加え、多彩な変化球を自在に操り13奪三振。「ドラフトを前に、これだけ投げられれば十分上位でいける」。6月の大学野球選手権以来となる隅田の投球を見届けたスカウトたちは順調な成長にうなずき、「1位候補」の評価も揺るぎないようだ。

大学4年間で順調に成長


 長崎・波佐見高時代はほぼ無名。3年夏の甲子園に出場し、彦根東高(滋賀)との開幕戦で先発も、9回途中6失点(自責点3)でサヨナラ負け。同校の得永健監督から「大学でプロを目指すのもいいんじゃないか」と言われ、西日本工大へ。1年春から公式戦を経験し、3年秋に最速150キロをマーク。入学時に「プロへ行ける素材」と見込んで二人三脚で歩んできた武田啓監督は「ここまでプランどおりに順調に育ってきました」と話す。

 大学最後の目標は全国で勝利を挙げること。「やり残したことがないようにしたいんです」と、明治神宮大会出場と1勝を期す。コツコツ努力を続けて開花した左腕が「ドラ1」の夢をたぐり寄せる。

文=前田泰子 写真=BBM

週刊ベースボール別冊秋嵐号『2021ドラフト候補選手名鑑』より
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