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1位候補の立場をつかみ取った投球。法大・山下輝が緊張に打ち勝ち最後のアピールに成功

 

「対右へのツーシームは武器になる」


法大の152キロ左腕・山下輝は立大2回戦(10月10日)に先発して7回2失点で敗戦投手(1対4)も、現状の持てる力を出し切った


 90球。まさしく、最後のアピールである。

 ドラフト会議を翌日に控え、法大の152キロ左腕・山下輝(4年・木更津総合高)は思い切り腕を振った。10月10日の立大2回戦で先発。7回2失点で敗戦投手(1対4)となったが「全体的には、悪くなかった。夏場から取り組んできたことが出せた。まずまずの結果」と、淡々と試合を振り返った。

 法大は新型コロナウイルスの集団感染により、8月20日から活動休止となった。山下は8月4日のオープン戦(対JR東日本)で自己最速を1キロ更新する152キロを計測。ラストシーズンへ向けて、調子を上げていた矢先だった。9月25日に活動再開。「この1試合に懸ける思いは強い」と、ドラフト前最後となる先発登板を照準に、急ピッチで状態を上げてきた。長期ブランクで指先の感覚が鈍っていた時期もあったが、唯一の紅白戦(10月3日)とブルペン投球で何とか間に合わせた。

 立大2回戦では最速151キロ。対右打者の外角へ逃げるツーシーム、ヒザ元を突くスライダーにはキレがあり、12奪三振。「変化球の精度、真っすぐの質をテーマにしてきました。7回を投げられたので、ひとまず安心しました」。実はこの日の登板を前にして、「人生で初めてです」と、食事が取れないほど、極度のプレッシャーに襲われていたという。

 重圧から解放された、試合後の会見では「まだ終わったばかりなので……。明日になれば緊張する」とドラフトを翌日に控え、本音を語った。

 神宮のネット裏にはドラフト前日にもかかわらず、複数のNPB球団のスカウトが目を光らせた。5人以上が視察した球団が3チームもあり、山下への関心の高さを示していた。ある球団幹部は、こう漏らした。

「2位以内には、指名されるでしょう。ただ、(チーム事情によっては)1位で上がるかもしれない。春よりもボールの力、スピードもあるし、対右へのツーシームは武器になる」

 大学生左腕が多い傾向にある2021年ドラフト。この秋、山下は最初で最後のアピールで、自らの手で1位候補の立場をつかみ取ったと言える。出せる技術は、すべて出し切った。あとは「運命の日」を静かに待つのみである。

文=岡本朋祐 写真=榎本郁也
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