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【MLB】一世紀前の野球も身近に、詳しいデータに期待

 

MLBがニグロ・リーグの成績も加味することになったことで、当時の成績やどういう試合をしていたかも今後分かってくるのは、より野球が深く理解できることにつながる。写真はニグロ・リーグで活躍した後、1956年に来日したブルックリン・ドジャース時代のジャッキー・ロビンソン[左上]、ジム・ギリアム[右上]、ロイ・キャンパネラ[下]


 2000年4月に誕生したMLBのデータサイト「ベースボールリファレンス」はリサーチが楽しい。二刀流・大谷翔平の記録への挑戦で、あらためてベーブ・ルースのキャリアにスポットライトが当たるが、このサイトではMLBの1914年以降のボックススコアはすべて見ることができる。

 14年7月11日、レッドソックスの新人ルースは「九番・投手」でデビュー。相手クリーブランド・ナップス打線には三番にあのシューレス・ジョー・ジャクソン、六番にレイ・チャップマンがいた。ジャクソンは映画「フィールド・オブ・ドリームス」の題材になり、ルースがスイングをマネたという好打者。

 チャップマンはデッドボール(飛ばないボール)時代を象徴する選手で、17年の67犠打はメジャー記録、20年8月のヤンキース戦で死球をこめかみに受け12時間後に亡くなった。この悲劇の後に試合中に汚れたボールは審判の判断でいつでも交換できるようになり、スピットボールなどボールへの細工が厳しく取り締まられ、結果的に本塁打が急増した。

 今から107年前と大昔のボックススコアだが、ルースが7回8安打3失点(自責2)で勝ち投手になったことだけでなく、さまざまなドラマを想起させてくれる。「ベースボールリファレンス」はプロ野球関係者でもなんでもない、ショーン・フォーマン氏がアイオワ大学で、応用数学の博士論文に取り組んでいたころに作った。

 子どものころからファンタジーベースボールが大好きで、マイナーのプロスペクトがメジャーでどれだけ活躍できるか予測するのに、どうデータを使えばいいか思案しているうちに、できあがった。それ以前には「トータルベースボール」という重くて分厚い事典があったが、インターネットの方がはるかに見やすく、調べやすい。

 ファンだけでなく、現場の実況アナや記者も日々リサーチに利用するようになった。2006年、フォーマン氏は大学の先生を辞め、リファレンス専業となっている、そんな彼の新たなプロジェクトがニグロ・リーグのデータだ。

 昨年12月MLBは1920年から48年のニグロ・リーグの成績もメジャー・リーグの正式記録とすると発表、それに伴いリファレンスも今年6月に本格的にデータを組み込んだ。おかげで22年のブレット・ジョー・ローガンは、投手として14勝8敗、打者としては15本塁打で、18年のルースのように二刀流で活躍していたことが分かった。

 ニグロ・リーグはベンチ入り選手が少ない上に、ダブルヘッダーが多かったから、より二刀流選手が必要だったようだ。とはいえ当時のボックススコアは見つかっておらず、詳細は不明。フォーマン氏は「ここからスタートし、リサーチが進み新たな情報が見つかれば、データベースはより正確なものに近づいていく」と説く。

 ローガンはブレット(BULLET/弾丸)のあだ名がつくほど球が速く通算120勝、ただ170センチ72キロと小柄で本塁打は50本どまり。投手メーンの二刀流だったようだ。このプロジェクトがうまくいき、大谷の先輩のことがもっと分かれば、二刀流をより理解でき楽しくなると期待している。

文=奥田秀樹 写真=BBM
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