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2021ドラフト

2021年ドラフト採点は西武が最高得点 独自路線の楽天、中日は「大成功」になるか

 

4球団が競合した隅田。西武が当たりクジを引いた


 2021年度のドラフト会議が都内ホテルで10月11日に開催され、即戦力左腕として4球団が競合した西日本工大・隅田知一郎は、西武が交渉権を獲得。高校No.1右腕の市和歌山高・小園健太は2球団が競合してDeNAが当たりクジを引いた。明桜高・風間球打ソフトバンク、上武大・ブライト健太中日が1位で単独指名に成功した。12球団で計77選手が指名され、日本ハムが球団別で最多の9選手だった。各球団のドラフトの結果を週刊ベースボールONLINE編集部が採点する。

ヤクルト、阪神、巨人の採点


ヤクルトは外れ1位で法大の左腕・山下の交渉権を獲得した


ヤクルト 70点
1位 山下輝 投手 法大
2位 丸山和郁 外野手 明大
3位 柴田大地 投手 日本通運
4位 小森航大郎 内野手 宇部工高
5位 竹山日向 投手 享栄高

 外れ1位で広島と競合した左腕・山下輝(法大)は高津臣吾監督が当たりクジを引いた。100キロの巨体から150キロを超える直球が武器だが、変化球の精度も高く制球もまとまっている。先発、救援と幅広く起用できるため大きな戦力になるだろう。俊足巧打の丸山和郁(明大)は俊足巧打のリードオフマン。柴田大地(日本通運)はケガで日体大の4年間はベンチ外だったが、社会人野球ではい上がった苦労人。最速156キロの剛腕は守護神候補だ。投手陣の層を考えると、即戦力の投手をもう1人獲得しても良かったかもしれない。

阪神 75点   
1位 森木大智 投手 高知高
2位 鈴木勇斗 投手 創価大
3位 桐敷拓馬 投手 新潟医療福祉大
4位 前川右京 外野手 智弁学園高
5位 岡留英貴 投手 亜大
6位 豊田寛 外野手 日立製作所
7位 中川勇斗 捕手 京都国際高

 外れ1位で森木大智(高知大)を獲得できたことは前向きにとらえられる。4位の前川右京(智弁学園高)とともに阪神の将来を背負っていく選手だ。鈴木勇斗(創価大)、桐敷拓馬(新潟医療福祉大)はチームの懸案事項である救援左腕でチャンスを与えられる可能性が高い。6位の豊田寛(日立製作所)は広角に本塁打を打つ右の長距離砲。昨年のドラフトで6位指名された中野拓夢のように大ブレークする可能性を秘めている。チームの補強ポイントを押さえたドラフトを実現できたのではないだろうか。

巨人 60点
1位 翁田大勢 投手 関西国際大
2位 山田龍聖 投手 JR東日本
3位 赤星優志 投手 日大
4位 石田隼都 投手 東海大相模高
5位 岡田悠希 外野手 法大
6位 代木大和 投手 明徳義塾高
7位 花田侑樹 投手 広島新庄高

 外れ1位の翁田大勢(関西国際大)は右のサイドとスリークォーターの中間に近い腕の振りから150キロを超える直球が武器。制球、変化球はまだまだ発展途上だが伸びしろがあるともとらえられる。2位の山田龍聖(JR東日本)はエースになれる素材だが、制球力を磨く必要があるだろう。高い水準でまとまっている3位の赤星優志(日大)が一軍で最も早くデビューする可能性が高いかもしれない。先発の即戦力が補強ポイントであることを考えると、少し物足りなさを感じた。

広島、中日、DeNAの採点


関学大・黒原は広島の外れ外れ1位だが、能力は高い


広島 70点
1位 黒原拓未 投手 関学大
2位 森翔平 投手 三菱重工West
3位 中村健人 外野手 トヨタ自動車
4位 田村俊介 投手 愛工大名電高
5位 松本竜也 投手 Honda鈴鹿
6位 末包昇大 外野手 大阪ガス
7位 高木翔斗 捕手 岐阜商高

 関西の大学No.1左腕・黒原拓未(関学大)は「外れ外れ1位」だが、即戦力で期待される左腕だ。広島は2019年の森下暢仁、昨年の栗林良吏と1位指名の選手たちが活躍している。黒原にとっても2人の存在は大きな励みになるだろう。多彩な変化球が武器の左腕・森翔平(三菱重工West)も2位指名。左腕の即戦力が急務のドラフト戦略が見えてくる。4位の田村俊介(愛工大名電)は投打でスケールの大きなプレーが魅力。プロでも二刀流挑戦の意向を示しているが、球団がどう育てるか。

中日 75点
1位 ブライト健太 外野手 上武大
2位 鵜飼航丞 外野手 駒大
3位 石森大誠 投手 火の国サラマンダーズ
4位 味谷大誠 捕手 花咲徳栄高
5位 星野真生 内野手 豊橋中央高
6位 福元悠真 外野手 大商大

 深刻な貧打が課題の中日はブライト健太(上武大)、鵜飼航丞(駒大)、福元悠真(大商大)と外野手の大学生3人を獲得。プロの世界ですぐに対応できるかは未知数な部分が否めないが、打線の核を作りたいという球団としての覚悟が伝わってくるドラフトだった。3位の石森大誠(火の国サラマンダーズ)は最速155キロの独立リーグNo.1左腕。三振奪取率が高く、救援の即戦力で期待される。独立リーグからプロ入りで大ブレークした又吉克樹に続きたい。

DeNA 85点
1位 小園健太 投手 市和歌山高
2位 徳山壮磨 投手 早大
3位 粟飯原龍之介 内野手 東京学館高
4位 三浦銀二 投手 法大
5位 深沢鳳介 投手 専大松戸高
6位 梶原昂希 外野手 神奈川大

 高校No.1右腕・小園健太(市和歌山高)の交渉権を獲得できたのは大きい。将来のエースとして期待される。徳山壮磨(早大)は回転効率の良い直球と多彩な変化球でゲームメーク能力が高い。三浦銀二(法大)は福岡大大濠高のときから注目された右腕。法大では不調に苦しんだ時期があったが、本来の輝きを取り戻しつつある。潜在能力を考えれば1、2位で指名された投手たちと遜色ない。5位の深沢鳳介(専大松戸高)は平成の大エース・斎藤雅樹(元巨人)を彷彿とさせるサイド右腕。将来が楽しみだ。

オリックス、ロッテ、楽天の採点


オリックス1位の東北福祉大・椋木は三振奪取能力に優れる


オリックス 80点
1位 椋木蓮 投手 東北福祉大
2位 野口智哉 内野手 関大
3位 福永奨 捕手 国学院大
4位 渡部遼人 外野手 慶大
5位 池田陵真 外野手 大阪桐蔭高
6位 横山楓 投手 セガサミー
7位 小木田敦也 投手 TDK
 
 高校生の指名が中心だった昨年のドラフトと打って変わって、即戦力の指名に重点を置いた。椋木蓮(東北福祉大)は右のスリークォーターから繰り出す154キロの直球、鋭く横滑りするスライダーで三振奪取能力が高い。適性を考えると救援で守護神に抜擢される可能性も。野口智哉(関大)は3拍子そろった大型遊撃手。今年ブレークした紅林弘太郎との激しいレギュラー争いが楽しみだ。池田陵真(大阪桐蔭)は将来の四番を嘱望される右の強打者。チーム戦略にマッチした選手たちを指名できた。

ロッテ 85点
1位 松川虎生 捕手 市和歌山高
2位 池田来翔 内野手 国士舘大
3位 廣畑敦也 投手 三菱自動車倉敷オーシャンズ
4位 秋山正雲 投手 二松学舎大付高
5位 八木彬 投手 三菱重工West

 1位指名で松川虎生(市和歌山商)を「1本釣り」に驚いた野球ファンも多いだろう。ただ、強肩強打の松川は森友哉(西武)のような球界を代表する強打者の捕手になる可能性を秘めている。ロッテは投手陣を見渡すと若手たちが育っているため、「次世代の正捕手」の指名は理にかなっている。2位の池田来翔(国士舘大)は習志野高出身で小学6年時にはロッテ・ジュニアでプレーしている。1年目から二塁、三塁のレギュラー争いに割って入れるか。3位は社会人No.1右腕・廣畑敦也(三菱自動車倉敷オーシャンズ)の指名に成功し、「ドラフト巧者」ぶりを見せた。

楽天 70点
1位 吉野創士 外野手 昌平高
2位 安田悠馬 捕手 愛知大
3位 前田銀治 外野手 三島南高
4位 泰勝利 投手 神村学園高
5位 松井友飛 投手 金沢学院大
6位 西垣雅矢 投手 早大
7位 吉川雄大 投手 JFE東日本

「独自路線」のドラフトで採点が難しいのが楽天だ。即戦力と呼べる選手は少ないが、将来大ブレークする可能性を秘めた選手たちを指名した。このドラフトが成功か失敗かは5年後以降の判断になるだろう。吉野創士(昌平高)は巨人・坂本勇人を彷彿とさせる打撃スタイル。線は細いが通算56本塁打とバットにボールを乗せる感覚をつかんでいる。2位の安田悠馬(愛知大)はフルスイングが武器の長距離砲。粗削りな部分はあるが、「将来の四番」として期待が大きい。3位以下も金の卵がズラリ。球団の育成手腕が問われる。

ソフトバンク、西武、日本ハムの採点


明桜高・風間の1位指名を公言していたソフトバンクは一本釣りに成功


ソフトバンク 75点
1位 風間球打 投手 明桜高
2位 正木智也 外野手 慶大
3位 木村大成 投手 北海高
4位 野村勇 内野手 NTT西日本
5位 大竹風雅 投手 東北福祉大

 事前に1位指名を公表していた最速157キロ右腕・風間球打(明桜高)の単独指名に成功。左腕・木村大成(北海高)とともに将来のエースとして期待される。2位は長距離砲・正木智也(慶大)。チームは常勝軍団のレギュラー陣に衰えが見え、若返りが課題となっている。左打者が多いチーム構成で、右の大砲として正木にかかる期待は大きい。ソフトバンクは千賀滉大石川柊太甲斐拓也と育成枠で入団して球界を代表する選手に飛躍した。今回も育成ドラフトで14人を指名。激しい競争を勝ち抜き、大ブレークする選手は現れるか。

西武 95点
1位 隅田知一郎 投手 西日本工大
2位 佐藤隼輔 投手 筑波大
3位 古賀悠斗 捕手 中大
4位 羽田慎之介 投手 八王子高
5位 黒田将矢 投手 八戸工大一高
6位 中山誠吾 内野手 白鴎大

 西武にとって会心のドラフトになっただろう。左腕が手薄なチーム状況で、4球団が競合した1位・隅田知一郎(西日本工大)の当たりクジを引き当てた。2位の佐藤隼輔(筑波大)も1位で消えておかしくない即戦力左腕。この2人を獲得できた時点でドラフトは成功と言えるだろう。3位は「次世代の正捕手」として期待される大学No.1捕手・古賀悠斗(中大)。4位以降は将来を見据え、羽田慎之介(八王子高)、黒田将矢(八戸工大一高)と大化けする可能性を秘めた両投手を指名できた。

日本ハム 70点
1位 達孝太 投手 天理高
2位 有薗直輝 内野手 千葉学芸高
3位 水野達稀 内野手 JR四国
4位 阪口樂 内野手 岐阜第一高
5位 畔柳亨丞 投手 中京大中京高
6位 長谷川威展 投手 金沢学院大
7位 松浦慶斗 投手 大阪桐蔭高
8位 北山亘基 投手 京産大
9位 上川畑大悟 内野手 NTT東日本
 
 スケールの大きい高校生や「甲子園スター」を好む日本ハムらしいドラフトになった。メジャー志向の強い達孝太(天理高)は手足が長く身体能力が高いが、それに頼るわけではなく野球理論にも精通してクレバーだ。ダルビッシュ有大谷翔平のような日本を代表するエースになれるか。2位以降も有薗直輝(千葉学芸高)、阪口樂(岐阜第一高)、畔柳亨丞(中京大中京高)、松浦慶斗(大阪桐蔭高)と高校野球ファンが胸をときめかせる好素材を指名。3位の水野達稀(JR四国)は小柄だがパンチ力と堅守が身上の遊撃手。定位置獲りを狙う。

写真=BBM
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