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広島・九里はFA宣言すれば争奪戦必至 ファンから「広島愛貫いて」の声が

 

プロ8年目で初の2ケタ勝利


10月12日のDeNA戦で12勝目を挙げた九里


 抑えれば雄叫びを上げ、打たれれば悔しさを露わにする。ポーカーフェースの投手が多い時代に、「昭和の雰囲気」を漂わせるのが広島九里亜蓮だ。今季は9月29日の阪神戦(甲子園)で6回2失点ときっちり試合を作り、プロ8年目で初の2ケタ勝利をマーク。10月12日のDeNA戦(マツダ広島)でも7回無失点の好投でリーグトップタイの12勝目を挙げ、最多勝を狙える位置につけている。

「九里の魅力は何といっても体の強さです。大きな故障もなく先発ローテーションで毎年回るので計算が立つ。スライダー、カットボール、ナックルカーブ、チェンジアップ、フォーク、ツーシームと多彩な変化球が武器ですが、直球にも力強さが出てきている。ピンチでも動じないメンタルの強さも頼もしい。今年7月にFA権を取得しましたが、先発投手のコマ不足に悩んでいるチームは多い。権利を行使すれば争奪戦になることは間違いないでしょう」(スポーツ紙デスク)

 父親は元アトランタ・ブレーブス傘下3Aの遊撃手でプレーした米国人のマーク・アントニオ・シェック。日本人の母親との間に生まれた九里は幼少の時から身体能力が高く、ローラースケート、アメリカンフットボール、バスケットなどさまざまなスポーツに挑戦していた。その中で、最も夢中になったのが野球だった。岡山理大付高から亜大に進学すると、4年秋のリーグ戦でMVP・最優秀投手賞・ベストナインの3冠を受賞。チームを33年ぶりの優勝に導いた。この活躍で評価を上げ、広島にドラフト2位で入団する。1位は3球団が競合した九州共立大の大瀬良大地だった。

 九里は週刊ベースボールで当時の様子を、こう振り返っている。

「正直、ドラフトにかかると思っていなかったので(2位指名で)出た名前が自分なのか疑わしかったです。ドキドキというより驚き。まさかという感じでした。一応、プロ志望届は出していたので、大学(亜大)で待機はしてましたけど。ドラフトにかからなかったら、(父の祖国の)アメリカにでも行こうかなと思っていました。同期で1位の(大瀬良)大地とは、前日に電話で連絡を取ってたんですよ。『俺はかかるか分からないけど、一緒にやれたらいいね』って。だから2人ともカープでうれしかった。大学ジャパンでチームメートだったので、それまでもメールとかしていました。プロでもジャパンに入る大地はすごいですよね」

焼酎ラベルに「一途」


 先発、ロングリリーフとどこでも投げられるタフネス右腕は重宝された。17年は35試合登板で9勝5敗2ホールドとリーグ連覇に貢献。18年以降は先発ローテーションとして稼働したが、3年連続8勝と2ケタ勝利にあと一歩届かなかった。ただ成長の跡は見せている。コロナ禍で120試合制の昨季は自身初の規定投球回をクリアし、8勝6敗、防御率2.96の好成績をマーク。背番号を「12」から「11」に変更した今季はエース格として白星を積み上げている。

 九里は新人の14年2月の春季キャンプ休日に宮崎県日南市の「京屋酒造」で酒造りを体験した際、焼酎ラベルに「一途」と記し、生涯広島を宣言したことが話題になった。広島ファンからは「広島愛を貫いて残留してほしい」という声が聞かれる。

 九里は全身全霊をかけて相手を抑えることしか考えていないと思うが、ファンは違う。今オフの去就が注目される。

写真=BBM
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