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残り1枠をつかみ取りJR東日本が12年連続都市対抗出場決定

 

延長10回に決勝適時打


12年連続の都市対抗出場を決める殊勲打を放ったJR東日本の主将・渡辺は、ナインの手によって神宮の杜を舞った


 泣いても、笑っても最後の試合。JR東日本の主将・渡辺和哉(専大)が前夜、寝床についたのは朝3時だった。高まるテンションを抑え切れず結局、6時には目が覚めたという。

「じっとしていられず、体を動かしていましたね(苦笑)」

 その気持ちは、痛いほど分かる。10月11日。JR東日本はセガサミーとの都市対抗東京第3代表決定戦を、延長18回の末に落とした(3対4)。5時間23分の大激戦で、試合終了は23時22分だった。東京ドームへ進出する本戦出場へ、あとがなくなった。しかし、試合は待ってくれない。体を休める時間もない。翌12日には、最終決戦が控えていた。

 JR東日本は昨年まで11年連続都市対抗出場。今季から主将に就任した入社6年目の渡辺は「四番・捕手」の大黒柱を任されていた。残る1枠は明治安田生命との第4代表決定戦。極度の重圧を背負い、相当な疲労も抱えていた。昼過ぎにグラウンド集合。各自が体をほぐし、決戦の地・神宮球場へと向かった。

 JR東日本は7回までに4対2とリード。三塁ベンチの浜岡武明監督(駒大)は「今日も18回までやるぞ!!」と、ジョークを言い放ち、選手をリラックスさせた。しかし、8回裏にミスが絡んで追いつかれ、4対4のまま延長に入った。そんな簡単に終わるはずはない。チーム全体としても、想定内だった。10回表一死三塁。ここの好機で、試合を決める中前適時打を放ったのが、渡辺であった。

 渡辺は8回途中から救援した左腕・山田龍聖(高岡商高、巨人ドラフト2位)を好リードでけん引し、10回裏の相手攻撃を三者凡退に斬り、12年連続24回目の出場を決めた。JR東日本は今回の東京地区二次予選で最多7試合を戦い、ラスト1枠を手にしたのである。この試合で全国9地区の二次予選がすべて終わり、本戦出場32チームが出そろった。

「1年、1年、歴史を作ってきて『連続出場』という毎年、苦しい思いをしてきました。何とかつなげることができて良かった」(渡辺)

 主将としての責務を果たしたが、まだ途中過程である。もちろん、目標は10年ぶりの都市対抗優勝、黒獅子旗の奪取。とはいえ、厳しい予選を勝ち抜き、主将・渡辺もこの晩はひとまず、ゆっくりと寝床に入れたはずだ。

文=岡本朋祐 写真=井田新輔
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