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ベースボールゼミナール

良いキャッチャーの条件とは?「見て分かりやすいのはキャッチング」/元中日・中尾孝義に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は捕手編。回答者は現役時代に強肩強打を誇り1982年の中日優勝時にはMVPに輝いた、元中日ほかの中尾孝義氏だ。

Q.キャッチャーは肩やリードなど、いろいろな能力が要求されますが、「良いキャッチャー」とは何が基準になるんですか。一見して分かることなどあれば教えてください。(東京都・匿名希望)



A.今なら甲斐拓也選手はいいキャッチャー。肩もいいし、キャッチングもいい。信頼もされているようです

 今回からキャッチャーに関する皆さんの質問に答えていく中尾孝義です。キャッチャーの場合、答えが一つではないことも多いのですが、できる限り分かりやすく答えていけたらと思っています。

 最初の質問は……「良いキャッチャーとは」ですか。最初から難しい質問ですね(笑)。質問のとおり、キャッチャーはキャッチング、スローイング、リードと非常にたくさん仕事があるポジションです。一般論として答えていきます。まず見て分かりやすいと言えば、キャッチングですよね。一つの基準は捕球時にミットが流れない(動かない)ことです。ボールの勢いでミットが流れず、捕ったところでピシッと止められるキャッチャーですね。さらに言えば、自分の体の方向(内側)に自然にミットが入ってくるようなキャッチングを見ると、「このキャッチャーはうまいな」と思います。

 ただ、構えたミットにしっかり投げてくれるピッチャーならいいのですが、そうじゃないことが圧倒的に多い。そうなると、来るボールに対して、ミットを先回りさせて追う、予測する力が必要です。“追う”と言うとミットをボールに合わせ、追いかけるように動かしてしまいそうですが、追うのは目です。ミットは早めに予測した場所に置き、余裕を持って捕ります。

 見た目で言えば、どっしりしたキャッチャーはいいなと思います。どっしりと言うと体が大きなイメージですが、そうではなく、ボールに対して反応がいいキャッチャーです。先ほどのミットが流れないことも含まれますが、早めに反応し、球がそれても無難に捕球してくれるキャッチャーです。

イラスト=横山英史


 投手心理から考えれば、加えてリード面でしょう。ピッチャーが「こいつのサインどおり投げていれば大丈夫」と思ってくれたら、信頼関係もでき、どっしり見えてきます。そのためにキャッチングの技術を磨き、打者や投手の特徴に合わせたリードを勉強することは大切ですが、我を通せばいいわけじゃありません。ピッチャーの性格、気の強さ、弱さも見ながら、その選手に合ったリードや声掛けをしていくことですね。もう一つ言えば、リードに100点満点なんてありません。抑えれば100点、打たれたら0点という結果論で見られるのがキャッチャーです。

 今で言えば、ソフトバンクの甲斐拓也選手はいいキャッチャーだと思います。肩もいいし、キャッチングもいい。投手との信頼関係もできているように見えます。

●中尾孝義(なかお・たかよし)
1956年2月16日生まれ。兵庫出身。滝川高から専大、プリンスホテルを経て81年ドラフト1位で中日入団。89年に巨人、92年に西武に移籍し、93年現役引退。現役生活13年の通算成績は980試合出場、打率.263、109本塁打、335打点、45盗塁

『週刊ベースボール』2021年10月4日号(9月22日発売)より

写真=BBM
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