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高卒2年目で救援に不可欠な存在 加速度的成長を見せていた阪神・及川雅貴

 

「高校BIG4」と呼ばれて



 ヤクルトと熾烈な優勝争いを繰り広げる阪神。救援陣で奮闘していたのが高卒2年目左腕・及川雅貴だ。今季は5月28日の西武戦(メットライフ)で一軍デビューを飾ると安定した投球を続け、150キロを超える直球と縦に落ちるスライダーを武器に、「勝利の方程式」に組み込まれていた。10月7日のDeNA戦(横浜)で8回、ネフタリ・ソトに痛恨の逆転の2ランを浴び、10日のヤクルト戦(神宮)では3四死球と直近2試合では結果を残せなかったが、それでも有望株なのは間違いない。

 千葉県匝瑳市で生まれ育った及川は中学3年時に140キロを超える直球を武器に、U-15日本代表で活躍するなど世代を代表する投手だった。だが、名門・横浜高に進学後は順風満帆だったわけではない。星稜高・奥川恭伸(現ヤクルト)、大船渡高・佐々木朗希(現ロッテ)、創志学園高・西純矢(現阪神)とともに「高校BIG4」と呼ばれて甲子園に3度出場したが、制球難に悩まされる時期が長く試合序盤でマウンドを下りる試合も少なくなかった。

 潜在能力は申し分ない。ドラフト3位で阪神に入団すると、高校BIG4の中で唯一、中継ぎで一軍デビューする。4人の中で最後に初勝利をつかんだのが及川だったが、縁の下の力持ちとして試合終盤の勝負どころで力を発揮している。「及川の一番の強みはピンチに動じない強靭な精神力。得点圏に走者を背負っても直球で内角をガンガン突ける。今年は岩貞祐太が不調でなかなか状態が上がってこない。左腕の救援が手薄な状態で期待以上の活躍を見せていた及川の存在は非常に大きかった」(スポーツ紙デスク)。スケールの大きな投球スタイルで、将来の先発転向も十分に考えられる。

 及川は同期のドラフト1位・西純矢と入団1年目の20年2月に週刊ベースボールで対談した際、先輩左腕・高橋遥人の話題になった。西が「高橋遥人さんの遠投もすごいよね。ボールが落ちてこない」と話すと、及川は「そうそう。スーッと行きながらなかなかボールが落ちない。思い切り投げている感じじゃないのに、あのボールの軌道はすごかったし、感動したし、あの感じで自分も投げたい、とすごく思った」、「軽く投げてあのスピンがかけられているというのは、投げ方もいいんだと思うし、うまくボールに力が伝わっているんだろうな、と思いながら見ていた。やっぱり違うな、あれがプロ野球選手なんだと」と、あこがれを口にしていた。

力でねじ伏せるイメージ


 高校BIG4の中で及川が唯一の左腕だが、世代のトップランカーとして活躍しているのが同じ左腕のオリックス宮城大弥だ。今季は12勝4敗、防御率2.55と首位快走の立役者に。新人王の最有力候補と目されている。

「同じ左腕でも宮城と及川はタイプが違う。宮城が球のキレ、多彩な変化球を駆使するのに対し、及川は球質の重い直球で力でねじ伏せるイメージですね。まだどちらも発展途上の投手ですし、伸びしろが大きい。同じ関西を本拠地に置くチームで球界を代表する左腕になってほしいですね」(在阪スポーツ紙記者)

 シーズンは終盤に入り疲れも当然あるが、及川の力が必要な時が訪れるのは確かだ。加速度的に成長する左腕はチームの勝利のために、左腕を振り続ける。

写真=BBM
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