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プロ野球はみだし録

前代未聞の引退試合で見送られた助っ人のモッカ。お返しは「次は君のクビが危ない」…?【プロ野球はみだし録】

 

わずか4年の在籍だったが



 この2021年も、選手が現役を引退することを表明し、引退セレモニーで見送られる季節がやってきた。いずれも日本人の選手だ。近年はペナントレースの最終盤に執り行われるのがほとんどだが、古くから外国人の選手、それも日本でのプレーが5年に満たない助っ人の引退試合は珍しい。そんな稀有な例が1985年いっぱいで中日のユニフォームを脱いだモッカ。74年からメジャーでプレーし、82年に来日すると、1年目からリーグ優勝の起爆剤となった“優良”助っ人だ。

 助っ人ながら本塁打を量産するタイプではなかったものの、主に三番打者として23本塁打、76打点、打率.311。正三塁手として全試合に出場して、守備では平凡なミスも少なくなかったが、豪快なミスで鳴らした(?)遊撃の宇野勝との三遊間は、“野武士野球”を掲げ、攻撃的で細かいことは気にしない当時の中日を象徴していたようにも見えた。それ以上に、ファンやチームメートから人気を集めた理由は、その人柄の良さだっただろう。だが、助っ人の宿命か、地元の出身で2年目の藤王康晴を三塁で使いたいというチームの方針もあって、まだシーズンも終わらない9月12日に戦力外を通告される。「退団は受け入れるが、次の巨人戦まではやりたい」とモッカは要求。迎えた19日の巨人戦(ナゴヤ)こそ、前代未聞、助っ人の引退試合となる。

引退セレモニーでのモッカ


 地元ファンの前で、セレモニーで送られることになったモッカ。試合を前に、お返しでチームメートへ贈ったプレゼントも前代未聞のものだった。一塁の谷沢健一には「これで僕の悪送球を捕ってほしかった」とセミ取り網、やや成績が下降した大島康徳には「次は君のクビが危ない」とオモチャの刀、さらに新婚の上川誠二にはスタミナドリンクだったが、その理由は書かない。これまでも多くの選手が引退して、チームメートへ贈り物をしたこともあったはずだが、ここまで詳細に語り継がれることも異例だ。

 プロ野球の歴史とともに歩んできた中日。その長い歴史において最もファンに親しまれた助っ人として、モッカの名前を真っ先に挙げる向きは現在も多い。

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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