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背番号物語

【背番号物語】西武「#18」“平成の怪物”松坂大輔のオープニングとフィナーレを飾るのは“平成のエースナンバー”

 

昭和の時代は不安定な系譜


99年、入団1年目の西武松坂大輔


 西武の松坂大輔が現役を引退する。ドラフト1位で1999年に西武へ入団。このとき背負ったのが球界のエースナンバーとされる「18」だった。高卒ルーキーながらも、1年目から圧倒的な結果を残した松坂。それは西武にとどまらず、プロ野球で過去に「18」を背負ってきたエースたちをも凌駕するものだった。2001年まで3年連続で最多勝。2006年オフにポスティングでメジャーへ移籍して以降、日米4チームを経て20年に西武へ復帰していた。時は流れ、西武のユニフォームも松坂がプロ野球に君臨した時代とデザインが変わっていたが、それをふまえても、このときの「16」に違和感を覚えたファンも少なくなかっただろう。松坂は迎える引退試合で、ふたたび「18」のユニフォームに袖を通すことになる。

 球界のエースナンバーといわれるのは「18」だけだが、すべてのチームでエースが「18」を着けているわけではない。西武も前身の西鉄から好投手の系譜ではあったが、巨人のように不動のエースがリレーしてきたかといえば、疑問符がつく。西武は九州は福岡を拠点として1950年に西鉄クリッパースとしてプロ野球に参加。その初代「18」で、そのままライオンズの初代にもなった武末悉昌は南海(現在のソフトバンク)から来た右のアンダースローだったが、南海での結果を西鉄では超えることができなかった。

 武末の移籍で54年に2代目となった島原幸雄は「22」からの変更。翌55年のキャンプでサイドスローに転じると、その翌56年にチーム最多の25勝を挙げて2年ぶりV奪還の原動力となった。以降4年連続2ケタ勝利と黄金時代に貢献するも、56年に入団した稲尾和久が1年目から伝説的な鉄腕ぶりを見せる。西鉄に黄金時代を呼び込んだのは「18」だったが、その象徴となったのは稲尾の「24」だった。

 時は流れ、西武で21世紀に「24」は永久欠番になった一方、島原が広島へ移籍してからも「18」は河村英文若生忠男畑隆幸と好投手がリレーしたものの、チームの失速もあって、いずれも長続きせず。西鉄は73年に太平洋となり、西鉄の最後、太平洋の最初で「18」を背負った右腕の河原明が通算7年と九州では最長となる。

 その後はチームも「18」の系譜も不安定に。チームが西武となり、本拠地が現在の所沢へ移転して、黄金時代に突入してからも定着せず、阪神から南海、広島、日本ハムを経て84年に移籍してきた左腕の江夏豊が背負ったものの、わずか1年で現役を引退した。そこから2年の欠番。これで風向きが変わる。87年に後継者となったのは、来日3年目に「12」から変更した郭泰源だった。

涌井、多和田も最多勝


西武・郭泰源


 剛速球で“オリエンタル・エクスプレス”の異名を取った右腕の郭は、「12」ではリリーフに回ることもあったが、「18」で先発に固定されて本領を発揮する。91年には自己最多の15勝でMVPに輝き、97年まで2リーグ制の外国人投手としては新記録となる通算117勝。郭の11年は西武の「18」でも最長だ。ただ、同じ時期には右腕に「41」の渡辺久信、左腕には「47」の工藤公康と大きい背番号の左右両輪もいて、「18」だけが西武のエースだったわけではない。郭の引退で1年の欠番。これを継承したのが松坂だ。

西武時代の涌井秀章


 松坂のメジャー移籍からは2年の欠番を挟み、現在は楽天でプレーしている右腕の涌井秀章が2009年に「16」からの変更で後継者となって、16勝で自身2度目の最多勝。涌井のロッテ移籍で、やはり2年の欠番を経て、ドラフト1位で16年に入団した右腕の多和田真三郎が継承、3年目の18年にブレークして16勝で最多勝に輝いた。松坂が復帰した20年は多和田が「18」を背負っていたため、松坂が横浜高と西武、そして「18」の後輩でもある涌井の後継者となった形だった。

“平成の怪物”と称される松坂。ライオンズの「18」が最も輝いたのも、奇しくも平成の時代と重なる。その長い歴史で一貫したエースの系譜とはいえないかもしれないが、“平成のエースナンバー”であることだけは確かだろう。時代は令和。西武の「18」は、これからも物語を紡ぎ続けるべく、しばしの眠りにつく。

【西武】主な背番号18の選手
島原幸雄(1954〜58)
郭泰源(1987〜97)
松坂大輔(1999〜2006、2021)
涌井秀章(2009〜13)
多和田真三郎(2016〜20)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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