チームにとって貴重な存在であるサウスポー。しっかりしたピッチングができる左腕が豊富なチームはバリエーションが増え、ペナントレースも戦いやすくなる。果たして、パ・リーグ6球団の「左腕勝ち頭」は――。彼らの今季の活躍ぶりを振り返っていく。 記録は10月22日現在 オリックス・バファローズ
飛躍を遂げるも後半戦はカベに直面した。開幕2戦目の
西武戦(メットライフ)で初勝利。以降、破竹の勢いで白星を積み重ね、前半戦だけで9勝をマーク。コーナーを突く制球力に加え、最速150キロ超のストレートに、カーブ、スライダー、チェンジアップを交えて打者を翻弄。だが、後半戦に入り、ストライクを取りにいって打たれる場面が増えていった。勝てばマジック点灯、負ければ
ロッテのマジック点灯を許す大一番となった10月14日のロッテ戦(京セラドーム)では自己ワーストの5回5失点。重圧から本来の投球ができなかった。それでも、今季最終登板となった21日の西武戦(京セラドーム)は6回途中無失点で13勝目を手に。苦しみが20歳左腕をまた成長させていく。
千葉ロッテマリーンズ
安定感が光る。自身初の2ケタ勝利に到達し、ここまで10勝4敗の成績を挙げている小島和哉。9月11日の
楽天戦(ZOZOマリン)で1失点完投勝利を手にすると、同19日の
日本ハム戦(札幌ドーム)ではプロ入り初完封。10月3日の楽天戦(楽天生命パーク)でも、完封勝利を挙げるなど、後半戦は打車輪の働きで、チーム躍進に大きく貢献している。立ち上がりや、6回に課題を残してきたが、リリース時に声を上げるなど、気迫を前面に出しつつ、コーナーを突く抜群の制球力で凡打の山。シーズン防御率こそ、3.86だが、9月は4試合で2.54、10月は3試合で2.38と安定感が光る。今季最終登板は、10月27日の楽天戦(楽天生命パーク)が濃厚。悲願の優勝へ腕を振る。
東北楽天ゴールデンイーグルス
ここまで9勝(7敗)は左腕でトップであるとともに、チーム全体でもトップ11勝の
則本昂大に次ぐ数字。ベテランの
岸孝之、プロ2年目の滝中瞭太と並ぶチーム2位タイの成績は、ルーキーとしては十分に合格点を与えられるだろう。だが前半戦にだけで7勝をマークしながら失速し、二軍での再調整もあった後半戦は2ケタ10勝に王手をかけてから4戦連続白星なしで防御率3.94と、苦しんでいることも確かだ。残り4試合だがラストチャンスをつかみ、目標の2ケタ勝利に到達できるか。
福岡ソフトバンクホークス
今季も含めて3年連続リーグトップの防御率を誇る“投手王国”にあっても、左腕となると貴重な存在。特に今季は先発ローテーションとして勝ちを計算できる投手がおらず、最多勝は和田毅の5勝だ。「1年1年が勝負」と語るベテラン左腕は、40歳を迎えた今季も若手に負けず劣らずの投球で開幕先発ローテ入りを果たした。しかし、なかなか勝ち星を積み上げることができず、18試合に登板して負け数のほうが先行(6敗)。最終盤を前にコンディション不良でファーム調整となり、今季中の復帰は難しい状況だ。それでも、来季に向けて、和田の表情は明るい。「また競争して先発ローテーションを勝ち取らないといけない。年齢は関係ないんで」。最後の現役“松坂世代”は、まだまだやる気をみなぎらせている。
北海道日本ハムファイターズ
24試合に登板し5勝をマークする加藤貴之が今季の最多勝左腕だ。先発ローテーションを守り抜き、10月18日の楽天戦(楽天生命パーク)では3安打無四球で念願のプロ初完投初完封勝利を飾った。プロ6年目、先発106試合目での初完投は史上最遅記録。2019年にはショートスターターの中心を担うなど多様な起用に応えてきた孝行左腕に「こうやって投げられることも分かっていたけど、ショートスターターは加藤にしかできなかった」と信頼を寄せる栗山英樹監督は抱き合って喜びを分かち合った。「僕の長所を生かしてくれた監督。最後にこういうピッチングができることを見せられて良かった」と安どした左腕は初の規定投球回数にも到達。飛躍のシーズンとなった。
埼玉西武ライオンズ
今季の西武は左腕の勝ち星がわずか2勝とサウスポー不足に苦しんだ。勝利を挙げたのは内海哲也、
浜屋将太がそれぞれ1勝ずつのみだ。39歳のベテラン・内海は6月10日の
DeNA戦(メットライフ)、5回3失点で勝利も今季の登板は2試合。しかし、来季も現役続行の方向だ。経験豊富で若手のお手本となっている存在。
松坂大輔が今季限りで引退し、来季はチーム最年長となる。今秋のドラフトでは1、2位で即戦力左腕・
隅田知一郎(西日本工大)、
佐藤隼輔(筑波大)との交渉権を獲得。果たすべき役割はますます重要となってくる。
写真=BBM