今季はほぼファーム暮らし
リーグ3連覇を逃した巨人で厳しい立場に追い込まれている選手がいる。陽岱鋼だ。5年契約最終年の今季は不退転の決意で臨んだが、一軍出場は7試合のみで打率.143、0本塁打、0打点。シーズンの大半をファームで過ごした。
「動きを見ると34歳という年齢を感じさせないが、
日本ハムからFA宣言して争奪戦になった5年前と置かれた状況はまったく違うのは間違いない。来年もNPBで現役続行するなら推定年俸3億円からの大幅減俸は避けられないが、格安の年俸ならば手を挙げる球団が出てくる可能性がある。今季外野のレギュラーが固まらず貧打に苦しんだ
中日、外野陣が
島内宏明、
辰己涼介、
岡島豪郎と左打者が多い
楽天などは陽岱鋼が補強ポイントに当てはまる」(スポーツ紙記者)
かつてはスピード感あふれるダイナミックなプレーでファンを魅了した。2013年に打率.282、18本塁打、67打点、47盗塁で球団史上初の盗塁王を獲得。翌14年も打率.293、25本塁打、85打点、20盗塁の好成績をマークする。他球団の選手たちが一目置いていたのが。中堅の守備だ。俊足を生かした広い守備範囲、球際の強さ、強肩でゴールデン・グラブ賞を4度受賞。「日本一のセンター」と評された。読者からの質問にプロフェッショナルが答える週刊ベースボールの「ベースボールゼミナール」という連載で、陽と対戦経験のある元
ソフトバンクの野球評論家・
柴原洋氏は「現在のプロ野球で最もうまい外野手のは誰?」(17年7月当時)という質問に対してこう語っている。
「個人的な見解ですが、私は昨オフに日本ハムから巨人に移籍した陽岱鋼選手を推します。何と言ってもあの守備範囲の広さは驚異的です。盗塁王を獲得したこともある脚力ももちろんですが、バッターの特徴をよくつかめている選手だなと感じます。打席にいるバッターによって、ちょこちょことポジションを変えていて、それによって打った瞬間は『抜けた』と思うような打球にも追いつくことができるんですね。一歩目が抜群に速いのも大きな特徴だと思いますが、日本ハム入団時はショートを守っていましたから、打球に対する瞬間的な動き(瞬発力)はもともと備えていたんでしょう。もちろん、捕球技術もあり、前の打球でも後ろの打球でも、追いつきさえすれば、必ずグラブに収めます。球際も非常に強いですね。右肩を痛めたことがあり、送球面では以前よりも強さがなくなりましたが、それを補って余りある能力を持っていると思います」
年々薄くなった存在感
16年オフにFA宣言した際は29歳。まだまだ伸びしろを感じさせるパフォーマンスに他球団の評価は高く、巨人、
オリックス、楽天が獲得に名乗りを上げた。レギュラー争いが激しい巨人への移籍を決断。5年契約を結んだが一度も規定打席に到達することができず、不完全燃焼のシーズンが続いている。17年は下半身のコンディション不良、18年は左手甲の骨折で戦線離脱。活躍しなければ、新たに加入した外野手が取って代わる。18年オフに
広島から
丸佳浩が、昨オフには
DeNAから
梶谷隆幸がFA移籍してきた。存在感は年々薄くなり、三軍落ちの試練を味わった時もあった。
今季はイースタンでも56試合出場で打率.238、6本塁打、22打点と際立った成績を残せなかったが、類まれな野球センスがこのまま終わってしまうのは惜しい。オフの去就が注目される。
写真=BBM