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川口和久WEBコラム

ソフトバンク・長谷川勇也の引退試合に涙腺が緩んだ/川口和久WEBコラム

 

いつか指導者としても、この感動を


長谷川の表情がいい


 一瞬、涙腺が緩んだ。

 最近、人の引退試合で泣いたことなんてなかったが、少し来たね。

 ソフトバンク長谷川勇也だ。2013年の首位打者で、バッティングの職人と言っていいだろう。

 右足の故障もあって近年は出番が減っていたが、打席に入っただけで凄みを感じる男だった。

 10月21日、日本ハム戦がその長谷川の引退試合だった。

 出番は0対0の7回一死二塁。この時点でソフトバンクはCS進出にクビの皮一枚つながっている状態だ。絶対、負けられない試合で、何としても1点ほしい場面での登場だった。

 長谷川は一塁へのゴロで必死に走り、ヘッドスライディングをしたがアウト。悔しさに顔をゆがめ、ベンチで防具をたたきつけていた。

 こんな引退試合、見たことなかった。遠慮しながらの対戦になり、たいてい打者は三振で、投手は相手に三振してもらう。

 場面がそれを許さなかったのかしれないけど、1つの勝利のための執念に感動した。

 しかもそのあと甲斐拓也の2ランでしょ。あれは鳥肌が立ったし、そのあと、ベンチで号泣している長谷川を見て、少し涙腺が緩んでしまった。

 自分で選択して引退する選手は、体だけじゃなく、心が終わってしまっていることが多い。

 引退した西武松坂大輔は、最後、118キロしか出なかった。体もボロボロになっていたけど、その前に野球が怖くなったという話をしていた。

 俺は引退試合で142キロが出た。体はまだやれたかもしれないけど、心が折れていた。要は打たれたときに「悔しい。次こそ」という思いが出なくなったんだ。

 長谷川はどうなんだろう。

 俺は現役最後のシーンで、あそこまで悔しさをあらわにした選手を見たことがない。

「悔いはない」と言っていたけど、もったいないと思った。あの姿が一番、今のホークスに足りず、これからホークスに必要だと思ったから。

 次のセカンドキャリア、第2の人生をどうするのかは知らないが、いつか指導者として、こんな感動をファンに伝えてほしいと思った。

写真=BBM
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