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「やって当然。修行を4年間してきた」ヤクルト2位丸山和郁の逆転サヨナラ打でV戦線に踏みとどまった明大

 

3年生が空振り三振も


明大の主将・丸山和郁は立大2回戦(10月24日)にサヨナラ打を放ち、東京六大学リーグ戦の優勝争いに踏みとどまった


 明大の「教え」は生きていた。優勝の条件は勝利のみで迎えた立大2回戦(10月24日)。明大は初回、いきなり4点の先制を許した。しかし、ジワジワと追い上げ、1点差で9回裏、最後の攻撃を迎えた。今秋は連盟規定により、9回打ち切り。数字上、引き分けではV逸となる。つまり、サヨナラ勝利しか、リーグ制覇への道は残されていなかった。

 一死二、三塁。明大・田中武宏監督は代打に3年生・日置航(日大三高)を起用した。立大は前日の敗戦(明大1回戦)で優勝の可能性が消滅したが、今季最終戦を何としても白星で飾ろうと、必死の継投。溝口智成監督は8回からはリリーフエースの左腕・宮海土(3年・国学院栃木高)を投入し、手を尽くした。

 宮の気迫の投球の前に、日置は空振り三振に倒れる。二死二、三塁。打席に迎えたのは主将・丸山和郁(4年・前橋育英高、ヤクルト2位指名)だった。チームリーダーは積極的に初球をたたくと、飛球は中堅手を越えていく。2人の走者が生還し、明大は劇的な逆転サヨナラ勝利(5対4)をつかんだ。

 首の皮一枚、V戦線に踏みとどまった。

 丸山は感極まって、涙を流したが、試合後、田中監督は淡々と振り返っている。

「日置はまだ、3年生。修行の差が出た。丸山? やって当然。修行を4年間、してきましたので。その成果が、ここで出せた」

 指揮官の言う「修行」とは、明大伝統の「人間力野球」だ。かつて37年、監督として率いた島岡吉郎氏の指導方針が、現在も根底にある。野球は生活の一部。規則正しい寮生活を送ることが、野球の結果に直結する。明大は歴代主将がトイレ掃除を担当するように、野球の技術以前に心を磨く。社会へ出る準備期間となる4年間で、心身とも成長して卒業していく流れがある。この1年の差が、土壇場での勝負強さとして出たのだ。

 喜んでいるヒマはない。明大の「崖っぷち」は変わらない。中1日で26日からは法大との最終カードが控える。2連勝すれば、最終週・早慶戦(10月30、31日)の結果次第で、優勝の可能性が残るという星勘定だ。

 残り2試合。丸山は力強く語った。

「明治と言ったら、元気と粘り、気合と根性。気持ちと技術、中1日で鍛えていきたい」

 東京六大学のキャプテンナンバー・背番号10。丸山の背中は、日に日に大きくなっている。

文=岡本朋祐 写真=長岡洋幸
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