週刊ベースボールONLINE

背番号物語

【背番号物語】ヤクルト「#6」宮本慎也が19年。若き元山飛優の背中を押す12球団きっての遊撃手ナンバー

 

ヤクルト最長、プロ野球では最長タイ


ヤクルトで19年間、背番号「6」を着けた宮本


 高校球児では遊撃手が着ける「6」だが、プロ野球では古くから同じ内野手の背番号ではあったものの、必ずしも遊撃手が背負うものではなかった。「6」を自らの象徴にまで昇華させた選手たちも西鉄(現在の西武)の中西太、3チームで着けた落合博満ら、守備よりも好打や強打の印象のほうが強い男たちが並ぶ。ただ、近年は巨人で落合の後を受けた川相昌弘、現役の坂本勇人らが登場したこともあり、遊撃手のイメージが加速しているように見える。こうした傾向を引っ張っているのはヤクルトだろう。

 ヤクルトはプロ野球が現在の2リーグ制となった1950年に参加した国鉄が起源だが、「6」の系譜は、チームがヤクルトとなって以来“ミスター・スワローズ”の系譜とされる「1」に次ぐ安定感を見せている。国鉄では創設1年目の50年に二塁や遊撃を守った岩瀬剛が1年で引退、58年には外野のレギュラーだった青山浩が「35」から「25」を経て変更してきたものの1年で引退したこともあったが、ヤクルト時代の最短は91年から92年まで着けた二塁手で助っ人のレイ。同じ2年間では、国鉄でも56年に阪神から移籍してきた一塁手の谷田比呂美が57年オフに「26」となるまで着けていた。

 5年に届かなかったのは、あとはチームが国鉄からサンケイ、ニックネームもアトムズを名乗るなどしていた激動の時期、64年から67年までの4年間を「6」で過ごした篠田勇のみ。篠田はプロ5年目の68年に「35」へと転じて現役を引退したが、西鉄から来て四番打者として打線を支えた豊田泰光の陰に隠れながらも、65年は準レギュラーとしてチームを支えた遊撃手だった。

 そんなヤクルトで最長、プロ野球でも最長タイの19年間を「6」で過ごしたのが宮本慎也だ。遊撃手として5年連続を含む6度、現役の後半は三塁手としても4年連続でゴールデン・グラブに輝いた、まさに内野守備の達人だ。

 ドラフト2位で95年に入団した宮本。黄金時代のヤクルトにあって1年目から「6」を背負って即戦力となり、97年には遊撃のレギュラーとしてリーグ優勝、日本一に貢献する。最初のゴールデン・グラブを獲得したシーズンでもあった。2度目の受賞となった99年には45犠打で初のリーグ最多犠打、ゴールデン・グラブは以降5年連続で受賞している。

ヤクルトから遊撃ナンバーに定着


 2000年は19犠打と激減した宮本だが、一方で初の打率3割。翌01年には67犠打でプロ野球の頂点に躍り出る。以降4年連続リーグ最多犠打。これが途切れてからも規定打席に到達した上で打率3割をマークしたのは3度を数える。プロ2年目までは二塁を守ることもあったが、08年に初めて三塁を守ると、翌09年からは三塁がメーンとなって、完璧にアジャスト。最初は「暇だな」と思ったというから驚かされる。40歳で迎えた11年には通算2000安打に到達。コーチ兼任となった13年オフに現役を引退するまで、背番号も一貫して「6」を背負い続けた。

ヤクルトの「6」を遊撃手ナンバーに定着させた水谷


 一方、国鉄では必ずしも遊撃手の系譜ではない。51年に2代目となり、5年間「6」を背負った渡辺岩次(光央)は内野手ながら外野を守ることも多く、59年から5年間の赤木健一は外野手だった。チームの過渡期、68年から72年まで中野孝征、翌73年から日本一イヤーの78年まで永尾泰憲と遊撃手がリレー。この永尾を二塁に追いやり、78年のレギュラーとして水谷新太郎がリーグ優勝、日本一に貢献、オフに「40」から「6」へと変更したことで、遊撃手のナンバーとして定着したといえそうだ。

 その守備力は、このときの指揮官で、かつて巨人の遊撃手として鳴らした広岡達朗監督も認める安定感。84年には守備率.991をマークするなど、その後も堅守で低迷するチームを支えた。水谷は「6」のまま90年オフに現役を引退。水谷の12年間は宮本に次ぐ2位だ。レイの2年を挟んで欠番となった「6」を継承したのが宮本だった。

 宮本の後も欠番となった「6」を、この2021年に継承したのが、ドラフト4位で入団して元山飛優。「世界一のショートストップ」という目標を掲げる若者の背中を、ヤクルトの「6」が押す。

【ヤクルト】主な背番号6の選手
渡辺光央(1951〜56)
永尾泰憲(1973〜78)
水谷新太郎(1979〜90)
宮本慎也(1995〜2013)
元山飛優(2021〜)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング