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東京六大学の“強い絆”。歴史をつないだ「10試合」から多くを学んだ法大

 

「6校でリーグ戦を完遂する」


法大の主将・三浦銀二[DeNA4位]は1年春から4年秋まで、東京六大学リーグ戦で50試合に登板。コロナ禍の今秋はプレー以上に学ぶべきことが多かった


 歴史をつないだ。10試合を戦い切った。

 法大は今秋、1勝3敗6分の5位で、東京六大学リーグ戦の全日程を終了した。6対6の引き分けとなった最終戦(明大2回戦、10月27日)の試合後取材でゲーム内容について問われると、加藤重雄監督はこう切り出した。

「連盟関係者の皆さんには、最後までやらせていただいたことに、お礼を言いたいです」。ゲーム内容よりもまずは、感謝の言葉を口にしている。これが、正直な思いだった。

 法大は新型コロナウイルスの集団感染により、8月20日から活動停止。加藤監督と大島公一助監督は活動再開までの期間、地元・保健所からの指導を受けながら、寝る間を惜しんで、合宿所での対応に追われた。食事の配膳、後片付け、ゴミ出しのほか、身動きが取れない部員たちの生活面を支援。感染防止対策を徹底しながら、24時間体制で学生に寄り添い、最前線では想像を絶する日々が続いたという。

 開幕2日前に行われた9月9日の同連盟理事会では、法大の活動再開(9月25日)と対外試合解禁(10月9日)の意向を受けて協議。1週間の開幕延期(9月11日→18日)と日程変更が承認された。「6校でリーグ戦を完遂する」。これが、加盟校の共通認識だった。1925年秋に発足した同連盟は長い歴史の中で、6校による信頼関係で成り立っている。強い絆で結ばれており、お互いをリスペクトしている組織である。リーグ戦辞退、不戦敗も覚悟していた加藤監督は「仲間に入れていただいた」と、何度も頭を下げ、涙を流していた。

 本来、9月、10月上旬までに予定されていた法大の3カードは10月9日以降の予備日(火、水曜日)に再編され、組み込まれたのである。

 19日間で10試合という過密日程となったが、神宮でプレーできる喜びは、何にも代え難い充実感がある。約50日のブランクがあり、調整不足は明らかだったが、言い訳はできない。学生野球の聖地・神宮球場に立つ以上、勝利を求めて全力を尽くす。加藤監督は「失礼のない戦いをしたい」と強調していた。

「対抗戦意識」を丸出し


法大・三浦主将[左]と明大・丸山和郁主将[4年・前橋育英高、右]は試合後、健闘をたたえ合った。2人は高校3年時、侍ジャパンU-18代表でプレーした仲である


 10月27日。シーズン最終戦の明大2回戦はスリリングな好ゲームを展開した。意地と意地の激突。すでに両校とも優勝がない状況ではあったが、東京六大学のモットーである「対抗戦意識」を丸出し。法大は1点をリードして9回表の守りを迎えたが、主将兼エースの三浦銀二(4年・福岡大大濠高、DeNAドラフト4位)が踏ん張れず、6対6に追いつかれた。その裏、サヨナラの好機をつくるも、本塁は遠かった。今秋、10試合中、6度目のドローに加藤監督は「あと一歩、攻撃力が足りなかったが、負けない粘り強さは出せた。実力を発揮し、必死になって戦った。最後に目指している野球ができた」と及第点を与えた。

 明大2回戦。1年春から50試合目の登板となった主将・三浦は「ずっと居たい場所でした」と、4年間で成長させてくれた神宮のマウンドへの愛着を語った。シーズン中も「感謝しかないです」と繰り返していたのが印象的。一番・中堅で3安打の活躍を見せた副将・岡田悠希(4年・龍谷大平安高、巨人ドラフト5位)も「リーグ戦に参加させていただいたことに、感謝しています。最後にチームが一つになった。苦しかったですが、最終的に良いシーズンだったと思います」と総括した。

 勝敗という結果以上に、今秋の法大は歴史をつないだ「10試合」から多くを学んだ。五大学がいなければ、野球はできない。だからこそ、大事なのはフェアプレーの精神。審判員のほか、連盟関係者の支えがあって、初めて試合は成立する。新型コロナウイルスは昨年来、当たり前が当たり前ないことを教えてくれたが、東京六大学で野球ができる意義を、あらためて見つめ直す機会となったはずだ。4年生の思いを後輩たちが受け継ぎ、来春、入学してくる新1年生にも伝える義務がある。

文=岡本朋祐 写真=矢野寿明
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