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早慶戦に引き分け以上で優勝。“春秋連覇”へ慶大主将・福井章吾は「自分たちの野球を9イニングやる」

 

気負いはない春の王者


慶大の主将・福井章吾は早大1回戦(10月30日)で敗退後も、ショックを引きずらない発言が目立った。2回戦で勝ちか、引き分けで「春秋連覇」が決まる(写真は9回の中前打)


 追い詰められる展開となったが、春の王者に気負いはなかった。

 慶大は東京六大学リーグ戦で1991年以来、30年ぶりの春秋連覇がかかっている。最終週の早慶戦は、2試合を1引き分け以上で優勝。一方、早大のV条件は連勝のみ。今秋は連盟規定で同点の場合は9回打ち切りであり、引き分けさえも許されない状況であった。

 慶大は早大1回戦(10月30日)を3対5で落とした。リーグ戦は31日の2回戦を残すのみ。逆転優勝の可能性を残した早大・小宮山悟監督は「必死に何とか、全員で(勝利を)もぎ取りたい」と意気込んだのとは対照的に、慶大・堀井哲也監督は淡々と試合を振り返った。

「やることをすべてやった結果が、こうなった。内容的に、修正点があるわけではない。勝ち負けは、監督の責任。今日みたいに良いゲームをやってくれればいい」

 確かに見せ場は作った。3点を追う9回表の攻撃も、簡単には終わらない。内野ゴロの間に1点を返し、二死走者なしから主将・福井章吾(4年・大阪桐蔭高)が中前打。一発が出れば同点という場面まで作ったのである。

 引き分け以上で優勝となる2回戦を控え、主将・福井は言う。

「自分たちの野球を9イニングやる。結果、勝てていればいい」

 自分たちの野球とは、何か。福井は「1点でも多く得点し、1点でも失点を抑えることが、野球の本質です」と言えば、チーフスタッフの米倉孝太郎(4年・鎌倉学園高)は「どういう形でもいいから、1点をもぎ取る。走者を進め、次打者につなぐ。守備の面でも、最終的に1点多く勝っていればいい」と話した。

 福井はあらためて、コロナ禍でのリーグ戦開催の意義を語る。

「この情勢で野球をさせてもらっているのは、当たり前ではない。チーム全体が感謝を持って、臨んでいる。勝ち負け以上に大切なものをグラウンドで表現できれば」

 堀井監督は「春が終わった時点で、秋もチャレンジしていこうと、チーム一丸で夏を乗り越えてきた。(春秋連覇が)手の届くところまできましたが、泣いても笑っても、もう1試合。やってきたことを出し尽くす」と強調した。早慶戦の大舞台でも、背伸びすることはない。どんなビッグゲームでも、野球は野球。冷静に、1球1球を積み上げていくのみだ。このメンタルこそが、今年6月の全日本大学選手権を制した日本一・慶大の強さである。

文=岡本朋祐 写真=矢野寿明
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