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[MLB]自動化されたストライクゾーンの課題

 

マイナーで今季、ロボットでの判定を試験的に行った。さまざまな試みをしつつ、修正を計りながらだったが、まだまだ改善の必要があるようだ


 MLBが将来導入すると言われるロボットアンパイアは、本当にロボットが捕手の背後に立つのではなく、これまでと同じで人間がいて、トラックマン(レーダー)やホークアイといった機械が自動的に弾きだした判定をリレーするものだ。

 ホークアイは複数のカメラがとらえた映像からボールの最も妥当な軌道を再構築しコンピューターグラフィックスで瞬時に再現するテクノロジー。

 2021年シーズン、フロリダのローA、サウスイースト・リーグではホークアイで実験、課題が見えた。ローAの投手はおおむね、若く、球は速いが、コントロールがつきにくい。ルールブックを基本に、機械にストライクゾーンを教え込んだが、序盤四球が増えて、試合時間もとても長くなった。

 最初の1週間で18得点以上の試合が4試合、9イニング平均5.8四球だった。選手やコーチのフィードバック(アイパッドに、これは以前ならストライクないしはボールでなかったという一球一球に印をつける)を基に、シーズンの途中ゾーンを改良した。

 ベースの両サイドは2インチ(約5.08センチ)ずつ広げ、高めは3.5インチ(8.89センチ)削った。高低に関しては公式戦前に打者の身長を測り、身長の56/100の高さから28/100の低さをストライクゾーンと設定したのだが、51/100から27.5/100と変更している。

 さらにワンバウンドした縦に大きく割れるカーブがストライクになり過ぎないように、計測の位置をホームベースの前の部分ではなく、真ん中にしている。19年から実験を始めた独立リーグのアトランティック・リーグもそうだが、自動化の技術/AUTOMATED BALL−STRIKE TECHNOLOGY(ABS)の良さは、人間より遥かに判定が安定すること。一方で課題は人間のように状況に応じた調節ができないこと。まったくストライクが取れない投手に対しゾーンを広めにし、試合が進行するように変えたりはできない。

 そうなると機械にどうストライクゾーンを設定するのがベストか、そこは人間が知恵を絞らないといけない。これまで、人間の審判はルールブックのストライクゾーンに文字どおり忠実ではなく、自らの目と感覚と経験から判定してきた。結果、人間のゾーンは四角ではなくどちらかというと楕円形だったと思う。

 それを機械に任せるならミリ単位で規定しないといけない。果たして最適なストライクゾーンとは何なのか? 例えば身長で決めるのか、あるいは両ヒザを曲げて腰を落とした打者とすっと立った打者で区別した方が良いのか。ゾーンは二次元なのか三次元なのか。さらにローA、サウスイースト・リーグの実験で分かったように、試合をテンポよく進めるには彼らのストライクゾーンはメジャー・リーグのストライクゾーンより広めにした方が良いのだと思う。

 言うまでもなく、マイナーの試合の最大の目的は育成だ。ローA、ハイA、2A、3Aと微調整していき、若い投手をメジャーのレベルに近づけていく。機械に任せる前に、人間が知恵を絞り、最適なストライクゾーンを規定していかなければならないのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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