3年前に創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。バックナンバーを抜粋し、紹介する連載を時々掲載しています。 カネやんは言う「シゲ、早く監督やりなさい」
今回は『1973年8月6日号』。定価は100円。
日本ハム・
新庄剛志監督誕生でおそらく、この時期の
ロッテ・
金田正一監督を思い出した人もいるだろう。
引退後、コーチ経験なしで就任し、当初は「タレント監督」と揶揄された。
パフォーマンス好きで、コーチスボックスでのカネやんダンス、お客さんとの陽気な(時に物騒な)掛け合い、さらには投手交代の合間にはマウンドで自ら投球練習。さらに言えば、オチャラケているようで鋭い人間観察眼……。
オールスター特集のこの号。巨人・長嶋茂雄と金田監督の対談があった。今回は、その最後の部分のみ抜粋する。
結構いい話も入っている。
金田 遅かれ早かれあと1、2年のうちだね。長嶋監督が誕生するのは。
長嶋 そんなに早くやらせたいですか、僕に(笑)。もう少しプレーをやらせてくださいよ。
金田 プレーイングマネジャーや。シゲがやるなら。
長嶋 二足のわらじはカネさん、うちの場合はいけないですよ。
金田 いや、そういう時代が来るって。今年もし巨人が優勝できなかったらパッと変わって、川上(
川上哲治)さんがゼネラルマネジャーになってさ、シゲにいい参謀がついてプレーイングマネジャーになったら、また変わって面白くなるよ。お客さんも増えるで。
長嶋 とてもことしのカネさんのように鮮やかにはいきません。けっきょくパ・リーグの前期はロッテ旋風でしたもんね。
金田 あのな、この間、神宮の日拓戦でスタンドから投げ込まれたゴミくずをわしが拾ったんや。試合ができなくなるからこういうことしないでくださいって。そうしたらお客さんが
大勢グラウンドに飛び降りてきて、拾うのを手伝ってくれてね。もう2秒くらいできれいに片付いちゃったんだ。あのときはうれしかった。ファンと一緒に野球やってるんだなあと思ってな。でそういう形ができるのは、プロ野球の選手多しと言えどもシゲしかいないんだよ。だから私とシゲと、この2人が監督になってやり合うことができたら大変だと思うんだ。シゲが早くその気になって、そして、それこそ1リーグになればできるんだがな(笑)。
長嶋 いや、2リーグだってやれるでしょう。お互いリーグで優勝して日本選手権でぶつかればいい。
金田 いや、それはあかんわ。シゲは負けちゃうもの。いまの巨人の投手陣を立て直してやると言ったら、どうしたって2、3年はかかるよ。1リーグだったらもう、すぐにでもぶつかれるからね。
長嶋 カネさん、監督の話はいいですよ。まだ全然自信がないもの。
金田 大丈夫、やれば成功するって。わしもダメだろうと思ったけれど、やれたもの。監督って頭を使わんでもいいことが分かったからな(笑)。いい参謀さえつけばな。だからシゲ、やりなさい。早くやろう。なっ、分かったか(笑)。
では、また。
<次回に続く>
写真=BBM