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プロ野球記録ノート

レアな記録を多く生んだヤクルト、オリックスの2年連続最下位からの優勝【プロ野球記録ノート】

 

20年以上間隔が空いた優勝は過去6チーム


今季、25年ぶりの優勝を果たしたオリックス


 プロ野球はペナントレースが終了。両リーグともに2年連続最下位だったヤクルトとオリックスが優勝するという評論家泣かせのかなりレアなシーズンとなった。そこで今回は優勝チームを中心にちょっと珍しい記録を紹介する。

 オリックスはイチローがレギュラーに定着した3年目(入団5年目)の1996年以来25年ぶりのリーグ優勝となった。この年以降も2→3→3位と3年連続でAクラスを保っていたが、イチロー最終年の2000年は12年ぶりのBクラスの4位。2001年から昨年までの20年間で、2位=2度、4位=5度、5位=4度、6位=9度とAクラスはたったの2度で最下位が最も多いという低迷期だった。そこから一気に四半世紀ぶりの優勝となったが、20年以上間隔が空いた優勝は、

 1998年 横浜 1960年以来(大洋)38年ぶり 前年2位
 2005年 ロッテ 1974年以来31年ぶり 前年4位
 1999年 ダイエー 1973年以来(南海)26年ぶり 前年3位
 2006年 日本ハム 1981年以来25年ぶり 前年5位
 1985年 阪神 1964年以来21年ぶり 前年4位
 1974年 中日 1954年以来20年ぶり 前年3位

 と過去6チーム。今季のオリックスは、日本ハムと並び4番目に長い記録で最下位からの優勝は初めて。この記録のトップは1998年の横浜の38年ぶりだが、以降また長いトンネルに入り、すでに23年間リーグ優勝から遠ざかっている。ただしDeNAは2017年に3位からクライマックスシリーズを勝ち上がり日本シリーズに出場。21世紀で日本シリーズ出場がないのはオリックスだけで、ファイナルステージの戦いが注目される。オリックスが日本シリーズにコマを進めれば、もっとも日本シリーズから遠ざかっているチームは、今季42年ぶりに最下位となった西武ということになる(2008年の日本一が最後)。

優勝チームから最多敗投手


今季、リーグ最多の10敗を喫したオリックス・山崎


 オリックスは交流戦を12勝5敗1分けの成績で優勝した。一方、リーグ戦のみの成績を見ると、58勝50敗17分け、勝率.537で勝率.551のロッテを下回り2位。5球団との対戦成績は、2位・ロッテと3位・楽天には10勝10敗5分けと五分の戦い。4位のソフトバンクは13勝11敗1分け、6位の西武には15勝8敗2分けと勝ち越したが、5位の日本ハムには10勝11敗4分けと負け越した。

 交流戦導入後、優勝チームが同一リーグの対戦で2球団にしか勝ち越せなかったのは、2012年の日本ハム以来2チーム目。このときの日本ハムは2〜4位の西武(10勝12敗2分け)、ソフトバンク(9勝13敗2分け)、楽天(10勝12敗2分け)の3球団に負け越し、5位のロッテに16勝5敗3分け、6位のオリックスに15勝9敗と下位球団には大きく勝ち越し、また交流戦も14勝8敗2分け(2位)だった。交流戦施行前でも2球団にしか勝ち越せなかったのは、

 1989年 近鉄 勝ち越し=2、タイ=1、負け越し=2
 1992年 ヤクルト 勝ち越し=2、タイ=2、負け越し=1

 の2例があるだけというレアな記録だ。

 オリックスはリーグ最多の18勝(5敗)をマークした山本由伸、2位の13勝(4敗)を挙げた宮城大弥の両輪がいるが、チーム4番目の21試合に先発した山崎福也は8勝10敗と2ケタ敗戦をマークした。10敗は楽天の岸孝之、日本ハムの池田隆英と並んでリーグワースト。優勝チームから最多敗投手を出したのは、2005年の阪神・福原忍(8勝14敗)以来16年ぶり2度目のこと。この年は同僚の下柳剛が15勝で最多勝を獲得しているが、同じく最多勝だったのは最下位の広島黒田博樹という不思議な年だった。

試合数の半分以下の勝ち星で優勝


ヤクルトは小川(写真)、奥川の9勝が最高と2ケタ勝利に到達した投手がいなかった


 2015年に次ぎ、2度目の「2年連続最下位」からの優勝を成し遂げたヤクルト。課題だった投手陣は改善されたが、それでもまだ発展途上。チームの最多勝はエースの小川泰弘と2年目の奥川恭伸の9勝。優勝チームで2ケタ勝利投手がいなかったのは2000年のダイエー(篠原貴行永井智浩吉田修司若田部健一の9勝)以来21年ぶり史上2度目のことだ。ヤクルトはリリーフ陣の勝利が12球団トップの24勝(ロッテの22勝、DeNAの20勝が続く)。先発投手の勝利はチーム勝利の67.1%で、これはDeNA(63.0%)に次ぐ低さだった。

 ヤクルトは73勝をマークし143試合の半分以上の勝ち星を挙げたが、オリックスは70勝で試合数の半分以下の勝ち星で優勝した。これも1982年の中日以来2度目のこと。中日は130試合で64勝と半分に1勝足りずに優勝している。この現象を生むのは引き分けの多さに起因する。今季は新型コロナの対策で延長戦なしの特別ルールが設けられた。これによって引き分け数が大幅に増えた。昨年までの最高は2012年の74試合。それが今年は102試合とついに100を超えた。チームの引き分け数の最高は前述の1982年の中日で19。今年はソフトバンク21、巨人20とチーム記録も更新した。この延長戦なしで個人記録も生まれている。

 リリーフ投手が試合の最後に投げた場合「交代完了」という記録が付くのだが、昨年までのシーズン最高は2011年のオリックス・岸田護の66(登板68)だったが、これをロッテの益田直也が67に塗り替えた。益田は登板67なので、すべての登板で試合の最後に投げたことになる。これも1983年の西武・森繁和の登板59、交代完了59を塗り替える記録となった。

 最後になるが50年以上前、セ・リーグは1956〜61年、パ・リーグは1958、61年に「引き分けを0.5勝0.5敗として勝率を計算」した時代があった。もし今年のセ・リーグに当てはめるとヤクルトは9勝9敗、阪神は5勝5敗を加算することになる。ゲーム差なしなので当たり前の話ではあるが、82勝57敗とまったく並ぶのだ。

 阪神はヤクルトよりも4勝多い77勝をマークしていて、引き分けの大幅増が予想された今季、こんなルールを適用するのも面白かったのかもしれないと、ふと思ってしまった。

文=永山智浩 写真=BBM
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