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短期決戦でさらに輝く 「代打の神様」ヤクルト・川端慎吾に「投げる球がない」と驚愕の声が

 

天才的なバットコントロール



 2015年以来6年ぶりのリーグ優勝を飾ったヤクルト。その中で勝負どころの「代打の切り札」で大活躍したのが川端慎吾だ。

 持病の腰痛を抱えてフル出場が難しい上、守備位置の三塁は村上宗隆、一塁はオスナがレギュラーで固定されている。「天才」と評されるバットコントロールで、15年に打率.336で首位打者、最多安打(195安打)のタイトルを獲得した巧打者に与えられた役割は一振りが勝負を決する代打。スタメンで出場している時のように1試合で4打席与えられるわけでない。対応するのが難しいポジションで、川端は驚異的な数字を残した。

 今季の代打成績は89試合出場で82打数30安打、打率.366、1本塁打、18打点。得点圏打率.421と好機で勝負強さを発揮し、高津臣吾監督の期待に見事にこたえた。10月21日の広島戦(神宮)では中前適時打を放ち、今季18打点目を挙げ、ヤクルト・若松勉が持つ球団最多記録に並んだ。シーズンで代打30安打も07年の中日立浪和義、08年の阪神桧山進次郎、18年の阪神・原口文仁を抜き、リーグ単独2位に。ヤクルト・真中満が持つ31安打のプロ野球記録には惜しくも届かなかったが、その活躍ぶりは、まさに「代打の神様」だった。

「厄介なのはカットの技術ですね。内角の厳しい球、外角の落ちる難しい球をバットに当ててファウルにして、甘く入った球をきっちり仕留める。村上、オスナ、山田哲人塩見泰隆サンタナと強打者が並ぶ打線ですが、川端の一振りにやられた試合が数多くあった。対策がなかなか見当たらない打者です。ウイニングショットをファウルでカットされるので、投手は投げる球がなくなる。打ち損じを待つしかないが、ミスショットも少ない。競った試合で川端を出すような展開にしたくないですね」(他球団のスコアラー)

 川端は週刊ベースボールのインタビューで代打に立つときに心がけていることを聞かれ、以下のように語っている。

「たぶん、ほかの人とそんなに変わらないとは思うんですけど……。自分の出番が回ってきそうなときは、しっかり集中しておくことを心掛けています。あとはしっかり体を温めたり、しっかりバットを振ったり。相手ピッチャーのデータとかも全部頭に入れて、気持ちの整理をつけてから打席に入るようにしています。それと、とにかくマイナスなことは考えないこと。『打てなかったらどうしよう』とか『ここでゲッツー打ってしまったら……』とか。どうしてもそういうことを考えがちになってしまうので。なるべく悪いことは考えないようにして、『ここで打ったらヒーローだ!』くらいのプラス思考で、打席に立っていますね」

背水の陣で迎えた2021年


 また、昨年1月に腰の手術を執刀してくれた腰痛治療のスーパードクターと言われる徳島大学病院・西良浩一医師は衣笠剛球団社長兼オーナーが自ら探して、紹介してくれたことについても言及。「診てもらって、悪いところが見つかって手術することになって……。ずっと痛みが引かなかったのに、今ここまでできている。本当にありがたいですね」と感謝の思いを口にした。そして、「今年ダメだったら、いよいよ僕も危ういなと思っていましたし、今こうして一軍でプレーできていることには、いろいろな方に、いろいろな思いがありますよ。自分のこともそうなんですが、チームのことも、何とかしたいという気持ちはずっと持ち続けていましたから」と背水の陣で迎えたシーズンであることを明かしている。

 新たなポジションで輝きを取り戻した川端の戦いはまだ続く。クライマックスシリーズ、日本シリーズ。勝負を決める一打で日本一に導く。

写真=BBM
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