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背番号物語

【背番号物語】ヤクルト「#55」杉浦+杉浦=村上宗隆? ツバメが描く「55」の新時代

 

初代と現役が”四番サード”


今季、4年目で初めて本塁打王を獲得した村上


 ドラフト1位で入団した1年目の2018年からヤクルトの「55」を背負う村上宗隆。初打席本塁打の鮮烈デビューで2年目につなげると、19年は全試合に出場して36本塁打で新人王、続く20年には出塁率.427で最高出塁率、そして迎えた21年にはプロ野球で最年少の21歳7カ月で通算100本塁打に到達して、最終的には全試合に四番打者として出場、自己最多を更新する39本塁打を放って、初の本塁打王に輝いた。ヤクルトも6年ぶりリーグ優勝。これには若き主砲の貢献も大きい。

 一方、この連載で「55」は巨人を紹介したのみ。日米で活躍した“ゴジラ”松井秀喜が自身の象徴とした背番号だが、松井よりも前に着けて“50番トリオ”の一角を構成した吉村禎章は「補欠の番号」という認識だったことを紹介している。実際、「55」が選手の背番号となったのは1ケタの背番号に比べて歴史が浅い。指導者の背番号だった時期を経て、1チームに所属する選手の人数が増えたことによって現在の2リーグ制となった1950年から浸透し始めたものだ。その後は「補欠の番号」らしく、多くのチームで激しく選手が入れ替わる。結果を残した選手は数字の若い背番号へと巣立っていき、そうでない選手はチームを去っていった。そんな中でも比較的、歴代の人数が少ないのはヤクルトの特徴といえそうだ。

国鉄で50年に26本塁打を放った杉浦清


 ヤクルトは50年に参加した国鉄が起源だが、初代の「55」は52年から53年まで背負った杉浦清。戦後の46年に31歳で中部日本(中日)へ入団、1年目のシーズン途中から監督を兼任して低迷期を支えた内野手が、大洋(現在のDeNA)を経て移籍してきたものだ。大洋でも「55」でプレーしていた杉浦にとって国鉄1年目は38歳となるシーズンだったが、25本塁打を放って主砲として機能する。杉浦清の自己最多が50年の26本塁打だから、この移籍1年目もキャリアハイに迫る活躍だった。このときの杉浦清は現役の村上と同じ“四番サード”。ヤクルトの「55」はスワローズが誇る“四番サード”の系譜といえるかもしれない。

 杉浦清は翌54年いっぱいで現役を引退しているが、そのラストイヤーも103試合に出場して、2ケタ10本塁打を放っている。そこから「55」は3年の欠番を経て選手の短期間リレーと欠番を繰り返す一般的な傾向に合流していくが、初めて5年を超えたのは71年から背負った同姓の杉浦享(亨)だ。

最長は右打者のユーティリティー


6年目まで背番号「55」を着けていた杉浦享


 杉浦清は右打者だったが、杉浦享は左打者。「55」はドラフト10位で入団した左腕として与えられたものだったが、すぐに野手となり、一塁と外野を兼ねてレギュラーの座をうかがうようになった。外野守備に重心を置くようになった77年に打力も向上、翌78年からは「9」を背負ってレギュラーに定着して、初のリーグ優勝、日本一に貢献した。まだ「55」にレギュラーのイメージがなかった時代でもあり、「55」は杉浦享のブレークナンバーといえるだろう。そのまま80年代も主軸を担った杉浦享は、90年代は代打の切り札としてチームを支え、92年には日本シリーズで最初の代打サヨナラ満塁本塁打を放つなど存在感を発揮した。

 杉浦享の後は現役の村上まで9選手が「55」をリレーしている。90年代に巨人で松井が登場してからは各チームで左の強打者が「55」で“〜ゴジラ”と呼ばれるようになるが、この傾向と一線を画していたのがヤクルトだった。内野手の田中毅彦、投手の土井武(皓之)は5年には届くも、10年には届かず。初めて10年を突破したのがドラフト1位で2000年に入団した右打者の野口祥順。レギュラー定着はならなかったが、内野も外野も守ったユーティリティーで、代走としても機能して09年には11盗塁をマーク、14年までヤクルトひと筋、一貫して「55」を背負い続けた。翌15年に後継者となった山川晃司は捕手。高校では捕手としても活躍していた村上に「55」を譲って「69」に転じ、投手にも挑戦したが、一軍出場のないまま19年いっぱいで退団している。

 村上は一般的な「55」の印象に重なる左の強打者だが、“四番サード”の杉浦清、左打者の杉浦享、この両雄の後継者。ツバメが描く「55」の新時代だ。

【ヤクルト】主な背番号55の選手
杉浦清(1952〜53)
杉浦享(1971〜77)
田中毅彦(1978〜81)
野口祥順(2000〜14)
村上宗隆(2018〜)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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