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背番号物語

【背番号物語】巨人「#25」巨人では異色の“輸入”された系譜? 村田修一から岡本和真が継承した長距離砲ナンバー

 

もともとは守備で光る職人肌の系譜


岡本の前に巨人で背番号「25」を着けていた村田


 プロ野球よりも長い歴史を誇る巨人。背番号でも、巨人を発祥とする物語は多い。「11」が投手ナンバーの筆頭というイメージになったのは1リーグ時代から2リーグ時代にかけて活躍した別所毅彦の存在からだとされる。投手ナンバーでいえば、「18」がエースナンバーと語り継がれているのは巨人で藤田元司から堀内恒夫のリレーに始まったことが起源といって差し支えなさそうだ。さらには、捕手ナンバーとして普及している「27」も戦前から戦中に吉原正喜、V9という空前絶後の黄金時代には森昌彦という名捕手がいた。この点、「25」は異色だ。

 古くから「25」は長距離砲が多いナンバーだった。1リーグ時代にはライバルの阪神で、2リーグ分立で移籍した毎日(現在のロッテ)でも主砲として活躍した別当薫は草分け的な存在で、21世紀にも広島と阪神で着けた新井貴浩がいる。この2021年、2年連続で本塁打王、打点王の打撃2冠に輝いた岡本和真が背負うのも「25」だが、巨人で長距離砲の印象になった歴史は浅い。07年に“アジアの大砲”イ・スンヨプが「33」から変更したのが最初といえそうだが、「25」では故障もあって数字は下降線。「25」が長距離砲の系譜だった横浜(現在のDeNA)で2度の本塁打王に輝き、12年にFAで移籍してきた村田修一が系譜を“輸入”したような形となる。

今季、2年連続で本塁打王、打点王に輝いた岡本


 この村田が17年オフに退団、これをドラフト1位で15年に入団した岡本が「38」からの変更で後継者となったことでブレークして、長距離砲の系譜が成立した。ちなみに20世紀には村田と同様、横浜の源流である大洋から「25」のまま主砲の松原誠が移籍してきたが、在籍は1981年の1年のみ。翌82年に内野のユーティリティーで職人タイプの鈴木康友が「43」からの変更で後継者となり、鈴木とのトレードで来た同じタイプの鴻野淳基が背番号も継承したため、長距離砲の系譜にはならず。とはいえ、もともと巨人の「25」は、鈴木や鴻野のような守備で光る職人肌の系譜だった。

 巨人の「25」が歴史に初めて登場したのはプロ野球が始まって2年目の37年。初代の井上康弘は39年いっぱいで引退したが、内野守備の名手として名を残す。2代目の登場は戦後になってからで、同じく37年から「15」でプレーしていた外野手の平山菊二が兵役を挟み、「25」で再スタート。やはり外野守備の名手で、元祖“塀際の魔術師”の平山だが、これは苦手だった塀を戦争の経験で克服したことによるもので、異名も「25」時代についたものだ。平山は2リーグ分立で故郷の下関をベースに誕生した大洋へ移籍。そこから巨人の「25」は安定感を失う。

一時は投手がリレーするも


 50年に2リーグ制となってから初めて5年に届いたのは、プロ3年目の56年に「49」から変更してきた土屋正孝で、60年オフに国鉄へ移籍するまで背負った堅守の二塁手だった。V9がスタートした65年に「34」からの変更で後継者となって四番打者も務めたのがプロ4年目で外野手の相羽欣厚。代打がメーンながら、72年オフに南海(現在のソフトバンク)へ移籍するまでの8年間を過ごして、新天地でもリーグ優勝に貢献している。

 翌73年に「25」を背負ったのが相羽ら3人とのトレードで来た強打者の富田勝だったが、3年で日本ハムへ。76年には駒大から中畑清らと入団した平田薫が継承。「24」の中畑に並ぶ背番号で“左キラー”の代打として名を馳せるも、「25」を大洋から来た松原に譲って81年からは「19」でプレー、85年には大洋へ。時は流れ、鴻野も92年に大洋へ移籍して、ドラフト1位で入団した右腕の谷口功一が「25」の後継者に。これを95年にFAで広島から来た左腕の川口和久が継承、翌96年にはリリーバーとしてリーグ優勝に貢献している。

 川口の引退により99年に「64」からの変更で後継者となったプロ2年目の平松一宏も同じ左腕だった。21世紀に入り、ふたたび系譜は不安定になるも、05年には新人の亀井義行(のち善行)が背負って頭角を現している。

 岡本は巨人の「25」で初の本塁打王であり、打点王でもある。岡本と「25」の関係が今後の物語を左右しそうだ。

【巨人】主な背番号25の選手
平山菊二(1946〜49)
相羽欣厚(1965〜72)
川口和久(1995〜98)
村田修一(2012〜17)
岡本和真(2018〜)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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