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[MLB]MLBの公式記録を即座に配信するスタッツ・ストリンガー

 

MLBは試合の1球1球を即座にアップしているが、それはスタッツ・ストリンガーといわれる記録員が行っているからだ[写真はウィドマーさんのオフィス]


 今、私たちは世界中どこにいてもネットがあればメジャー・リーグの試合の途中経過を一球一球即座に知ることができる。記者席のオフィシャルスコアラー(公式記録員)の隣にスタッツ・ストリンガー(記録通信員)が座っているからだ。ハンク・ウィドマーさん、62歳は2001年、MLBが記録部門を創設したときの3人のメンバーの一人。「それ以前は各球団が雇った公式記録員が結果を郵送やファクスでリーグに送っていた。だが今は、MLBに雇われた記録員がつけた記録を通信員が即座にオンラインで流していく。01年に始めたときは間違いがあっても一般の人は気づかなかったが、今は世界中の人がスマホでチェックしているのでミスは許されない」と笑う。

 ウィドマ―さんは30球団で働く通信員を採用している。シーズン中に総勢110人。彼らはパートタイマーで、一人当たり25試合から30試合のアサイメントを受ける。ウィドマ―さんは普段は自宅(ラスベガス)のオフィスにいて、モニターだらけの部屋で彼らの仕事ぶりをチェック。コミュニケーションツールのスラックでつながっていて、問題が起こっても連携して解決していく。

「野球はゆっくりしたスポーツだけど、1球1球すべての記録を流していくとなると大変な作業。ランダウンプレーがあったときなど確認に手間取り遅れが出る。シフトで三塁手がライトの前で守っていて、5-3と記録すべきなのに、4-3にしてしまったなどの勘違いもある。私はオフィスで1日に3,4試合をモニターしている。今季は全部で750試合くらい見たと思う」。

 大きな試合では現場に出る。今季はオールスター・ゲーム、ナ・リーグ優勝決定シリーズ、ワールド・シリーズで自ら球場でスタッツ・ストリンガーとして働いた。「言うまでもなく、野球はほかのどのスポーツよりも記録が重要。MLBの記録部門は、今は28人に増えていて、マイナー・リーグの試合も、ドミニカ共和国、ベネズエラなどウインター・リーグの試合もすべて即座に公式記録を配信している。夏場の多いときは1日に100試合もあるから大変なんだ」とのこと。

 MLBの試合ではこの2人に加え、さらに2人が裏方として働く。一人はフィールドタイミングコーディネーター。近年のMLBの試合は、投手交代、イニング間など、決められた時間内に済ませねばならない。それをコントロールする。

 もう一人はBOSS。球場のスコアボードにストライク、ボール、ベースポジションなど基本データを即座に出す。試合の流れをコントロールする人、電光掲示板で試合経過を見せる人、球場でなくてはならない裏方だ。「4人で一つのチーム」とウィドマーさん。パートタイマーのスタッツ・ストリンガーにどういう人を雇うかというと、「学生だったり、引退した人だったり、先生や弁護士だったり、年齢も本業もさまざま。野球が大好きで、MLBの仕事を手伝えるのがうれしいという人たちに働いてもらっている」。

 記者席の主役、記者たちは面白い記事を書こうと躍起になるが、彼らはフィールドで起こったことを淡々と正確に流していく。

文=奥田秀樹 写真提供=ハンク・ウィドマー氏
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