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背番号物語

【背番号物語】楽天「#35」。2021年の打点王に輝いた島内宏明は2代目。永久欠番にも肩を並べる貴重な系譜?

 

星野監督、嶋基宏、田中将大、そして


入団から背番号「35」を着け続ける島内。今季は初の打点王に


 2021年のパ・リーグで96打点をマークして打点王に輝いた楽天島内宏明が背負うのが「35」。この背番号で他の選手を思い浮かべられるのは、かなりプロ野球に詳しいファンかもしれない。20年から島内のチームメートとなっている鈴木大地ロッテへ入団した12年から着けていたが、早々にブレークした鈴木は2年で背番号を変更して、楽天でも変わらず「7」でプレーを続けている。

 同じパ・リーグでは、過去に阪急(現在のオリックス)で通算代打本塁打の世界記録を樹立した高井保弘が着けたこともあった。「44」でキャリアをスタートさせた高井は、4年目に「35」となって初の代打本塁打を放ったものの、9年目には「25」に。通算代打本塁打のプロ野球新記録も「25」になってからであり、やはり高井には「25」の印象のほうが強い。「35」でチームの主力に名を連ね、背番号を変更しないまま引退した打者は、鈴木のいたロッテで1980年代に活躍した庄司智久が貴重な存在だ。言い換えれば、「35」は打者の出世ナンバーといえる背番号。もちろん島内も、そんな選手の1人だ。

 泣いても笑っても、現在の12球団で最も歴史が短い楽天。プロ野球に参加したのは2005年で、この21年が17年目だ。とはいえ、当初は入れ替わるように“消滅”した近鉄から分配ドラフトで入団したベテランも少なくなかったこともあり、ほとんどの背番号は何人もの選手にリレーされてきた。1年目からファンの背番号として永久欠番となっている「10」は“別格”だが、まだ歴代に2人だけしかいない背番号は極めて少なくなっている。

 2代目の田中将大が初のリーグ優勝、日本一を置き土産にメジャーへ移籍、この21年に復帰するまで欠番となっていた「18」、日本一イヤーの司令塔で現在はヤクルトでプレーを続けている嶋基宏が2代目の「37」、そして日本一に導いた星野仙一監督の永久欠番「77」など。これに肩を並べるのが島内の背負う「35」だ。楽天の初代エースといえる岩隈久志の「21」ですら釜田佳直早川隆久ら3投手の系譜となっているから、「35」が楽天において際だった存在であることが分かる。

【楽天】背番号35の選手
大廣翔治(2005〜11)
島内宏明(2012〜)


初代の悲運を2代目が超克


楽天の初代「35」大廣


 楽天がプロ野球へ参加した05年は岩隈のように、すでに実績のある選手が過去の背番号を楽天でも背負い続けるケースが多かったが、近鉄で最後の「35」だった内野手の三木仁が分配ドラフトによってオリックスの「58」となったことで、楽天で「35」は一種の“空席”のようなものだった。これで初代となったのが新人の大廣翔治だ。大廣はドラフト6巡目で入団した内野手で、一軍デビューは3年目の07年。11試合に出場して、プロ初安打もマークした。本拠地の仙台が悲劇に襲われ、混乱のスタートとなった11年には交流戦で活躍。5月21日のヤクルト戦(Kスタ宮城)ではサヨナラ打を放ち、地元のファンに歓喜を届けた。だが、6月の練習中にボールが顔に当たって骨折、これで視力が低下したことでオフに現役引退を余儀なくされる悲劇。裏方に転じた大廣の後を受けたのが島内だった。

 大廣と同じドラフト6位で明大から12年に入団した島内は、奇しくも大廣と同じ東洋大からロッテへ入団した鈴木とは同学年で「35」でも同期となる。1年目から開幕一軍を果たし、主に代走としてシーズンを過ごしながらもプロ初打席で適時打を放って2年目につなげた。迎えた日本一イヤーの13年は正右翼手として快挙の原動力になる。ただ、まさに原動力で、リーグ優勝の輪には加われず、その後も故障が尾を引いて、徐々に出場機会を減らしていった。

 大廣の悲運が後継者の島内にも襲いかかったようにも見えたが、16年に復活。出場100試合を突破して存在感を見せると、翌17年には初の開幕スタメン、初の規定打席で初の2ケタ14本塁打を放ち、19年には全打順本塁打を達成。迎えた21年は自己最多を更新する21本塁打、打点では自己最多を大きく更新しての初タイトルだった。

 現時点では「35」ひと筋で打撃タイトルを獲得したのは島内がプロ野球の第1号。打者の出世ナンバーということもあり、オフに背番号を若くする可能性もあるが、地味な印象もある「35」を今後の活躍によって自身の象徴にまで昇華させて、さらに輝かせてほしい気もする。

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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