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進化させた「5つのC」――日大三島・永田裕治監督がわずか2年で結果を残した理由

 

確固たる2つの指導スタイル


日大三島高(静岡)は九州国際大付高(福岡)との明治神宮大会2回戦(11月22日)で惜敗(1対2)も、永田監督は全国舞台で確かな手応えを得た


 昨年4月から日大三島高(静岡)を指揮する永田裕治監督は、今秋の東海大会を制して明治神宮大会に初出場。九州国際大付高との初戦(2回戦、11月22日)で1対2と惜敗したが、試合後は前向きな発言が聞かれた。

「新チーム結成時から比べると、かなり、成長している。ゲームには敗れましたけど、自分としてはよくできたのではないか、と」

 永田監督は報徳学園高(兵庫)出身。同級生にエース右腕・金村義明(元近鉄ほか)がおり1981年夏、甲子園で全国制覇を遂げた。中京大卒業後の87年から桜宮高(大阪)のコーチ、90年から報徳学園高のコーチ、94年に母校監督に就任した。甲子園には春11回、夏7回出場し通算23勝17敗。2002年春のセンバツでは大谷智久(元ロッテ)を擁し、初優勝へ導いた。17年春のセンバツ限りで勇退。日本高野連の技術・振興委員を務め18、19年には高校日本代表監督を務めた。昨年4月1日付で日大三島高監督に就任している。

 わずか2年で、結果を残した理由は何か。

 確固たる2つの指導スタイルにある。まずは「全員野球」。永田監督は説明する。

「メンバーに入れない子にも、人生がある。野球が上手い子だけに陽が当たるのではなく、控え部員が、スタンドで心から応援できる体制をつくっていきたいんです。全員野球。日大三島でも、その方針は変わりません」

 目的は人間形成。部員全員が同じ目標(甲子園)に向かって歩んでいく中で、永田監督は「4つのC」を大切にしている。

「誰にでもチャンスがあり、努力したら、チャンス(Chance)を与える。そのチャンスに対して、チャレンジ(Challenge)してほしい。すぐに成果が出るとは限らないので、指導者の助言を参考にしながら、そのときはやり方をチェンジ(Change)すればいい。そして、やる以上はチャンピン(Champion)を目指そう、と。でも、それは野球におけるチャンピオンだけではなく、この日大三島に入学して良かったと思える高校3年間を過ごし、人生の勝利者になってほしい、と。その過程を歩む術を、野球部でつくってもらいたい」

コツコツと磨かれた粘り


 報徳学園高、侍ジャパン高校日本代表でもこのポリシーを貫き、日大三島高では、コミュニケーション(Communication)を付け加えた。コロナ禍において、永田監督は部員との対話に、より力を入れてきた。練習時間が豊富とは言えない中でも、集中力を高めてメニューを消化。永田監督はグラウンドにおける指導者だけでなく、教員として、学校生活においても野球部員たちと一緒に過ごしている。信頼関係を築くのに、時間はかからなかった。

 進化させた「5つのC」により日々、コツコツと磨かれたのが「粘り」である。かつて、永田監督は甲子園で伝統の「逆転の報徳」を展開してきたが今秋、日大三島高でも終盤に強さを発揮してきた。「全員野球」とは、ものすごいパワーを生む。つまり、個の力に頼るのではなく、チーム力を結集させるムードが出来上がりつつあるのだ。

 冒頭にあるように、日大三島高は指揮官も驚く成長カーブを描いてきた。今秋は静岡大会を制し、東海大会優勝により、1984年以来2回目のセンバツ出場(甲子園は89年夏以来)を確実としている。「来年に対して、希望を持って取り組んでいきたい」。陣頭指揮を執る永田監督の下、進むべき道は決まっている。一冬を越せば、さらに、精度を増すはずだ。

文=岡本朋祐 写真=川口洋邦
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