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巨人を退団し、他球団で現役続行希望の山下航汰 「打撃センスは天才的」と高い評価が

 

「ビッグホープ賞」を獲得



 巨人が育成選手だった山下航汰と来季の契約を結ばないことを発表した。球団は育成選手で再契約する方針だったが、山下が他球団での支配下昇格を目指して退団を決断した。

 大阪桐蔭高で3年春夏連覇を飾った中日根尾昂ロッテ藤原恭大、報徳学園高で「No.1遊撃手」と評された広島小園海斗と同世代の21歳。山下は健大高崎高のスラッガーとして注目度が高かった。高2春に出場したセンバツでは2本の満塁アーチを放ち、同年夏の群馬県大会予選でも5試合連続本塁を放つなど通算75本塁打をマーク。パンチ力と確実性を備えた打撃技術はプロのスカウトにも高く評価されたが、一塁、左翼の守備位置は外国人や日本人の強打者と重なってしまう。編成上の問題で支配下での指名が見送られ、育成ドラフト1位で巨人に入団した。

 だが、プロに入ったら指名順位は関係なく実力の世界だ。19年にイースタン・リーグで打率.332、7本塁打、40打点で首位打者に輝く。高卒1年目でファームの首位打者はイチロー氏以来27年ぶりの快挙。同年7月に支配下登録されると、9月4日の中日戦(群馬)でプロ初安打となる右前打をマークするなど一軍で12試合出場した。

「内角のさばき、バットコントロールのうまさ……打撃センスは天才的です。高卒1年目の選手とは思えない完成度でしたね。山下のすごいところは技術だけでなく、気持ちの切り替えが試合中にできること。3打数無安打でも、4打席目で安打をきっちり打つ。無安打の試合が少ないのはアベレージヒッターの特徴です。早い時期に一軍で出てくると思いましたね」(他球団のスコアラー)

 同年オフにファーム部門でベースボール・マガジン社選定の「ビッグホープ賞」を獲得。山下は週刊ベースボールのインタビューに対して、以下のように熱い思いを語っている。

「育成契約でのスタートに関しては悔しい思いもありましたが、ジャイアンツ入団が決まったときに、冷静に考えて、5年計画を立てていたんです。1、2年目でファームで結果を残して支配下登録を勝ち取り、3年目でイースタンの首位打者、4年目で一軍に昇格し、5年目で一軍のレギュラーです。これはドラフトの指名会見でも話をしていて、この瞬間を焦らずに、5年後にしっかりと結果を残すために焦らずやろうと。その中で、4年目までの目標を1年目でクリアできたのは、気持ちの面が一番大きいのかなと思います」

「高校とプロとの違いに、試合の数、感覚があります。高校のときは長い休み期間を除いて、あっても土日だけ。その試合でできなかったことを、翌週の試合に向けて、『打てなかったからこうしてみよう』みたいな形で取り組んでいたんですが、プロでは二軍とはいえ明日も、あさっても試合があるわけで、落ち込んでいる暇も、考え込んでいる暇もなく、引きずっていたらやっていけない。打席ごとにも打てなかったら次の打席、次の打席と切り替えていかないとやっていけないな、と思うようになってから打てるようになっていきました。そのことに気付けたのは、月間MVPをいただけた5月くらいですね」

適応能力の高さ


 高校とは違うハイレベルなプロの投手に対し、適応能力の高さもうかがい知れる。

「プロのキレの良い変化球、伸びてくる直球にも苦しみました。初球で仕留められないことが多かったです。原因はタイミングです。差し込まれることが多かったので、始動を早くするようにアドバイスを受けて、意識しました。あと、打席の中では考え方をシンプルにして調子がいいときも悪いときも、“タイミング”と“脱力”の2つに絞るようになって、ヒットが出るようになってきました」

 ただ、順風満帆とはいかなかった。2年目の昨年は5月に右手有鈎骨を骨折し、その後もヒジを痛めるなど度重なる故障に苦しみ、オフに再び育成契約を結んでいた。今季は三軍では48試合出場で打率.366のハイアベレージをマークしたが、二軍で21試合出場して打率.226、1本塁打、6打点と支配下昇格は叶わずにシーズンを終えた。

 ファームで1年目に見せた輝きを一軍で見たいファンは多いだろう。他球団が支配下登録で獲得に乗り出すか。吉報を待つ。

写真=BBM
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