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中央学院大“悲願の日本一”で幕を閉じた今年の学生野球。神宮の杜に流れていた“爽やかな空気”

 

感極まった指揮官


中央学院大は慶大との決勝(11月25日)を制し(9対8)、悲願の初優勝。千葉県大学野球連盟の代表校として、6月の全日本大学選手権を通じても初の日本一だった。菅原監督は学生の手により、胴上げされている


 3時間35分の激闘を終えた閉会式後、両校指揮官は10秒以上、本塁ベース付近で健闘を称え合った。そして、最後は抱き合った。

 1997年から中央学院大を率いる菅原悦郎監督(60歳)と、就任2年目の慶大・堀井哲也監督(59歳)は同級生だ。堀井監督が19年11月まで15年、指揮官を務めたJR東日本(千葉県柏市)と中央学院大(千葉県我孫子市)の活動拠点は至近距離。当時から交流があり、大学の監督同士となって以降も毎シーズン、オープン戦を重ねて、高め合ってきた。

 明治神宮大会決勝(11月25日)で、両監督の直接対決が実現した。シーソーゲームの展開。中央学院大が最大4点差を6回裏に逆転して9対5とするも、粘る慶大は7、8回に計3点を挙げ、1点差まで詰め寄る。慶大は9回表も二死一、三塁と見せ場を作るが、最後は7回から救援した中央学院大の抑えの切り札・山崎凪(4年・千葉英和高)が締めた。

 中央学院大は1973年創部で、悲願の日本一のタイトルを奪取した。マウンド付近で歓喜の輪が広がったが、菅原監督が感極まったのはその後だった。

 試合終了のあいさつを終えると、中央学院大のメンバーたちは野球部員が控える内野スタンドへ、駆け足で優勝報告に向かった。ユニフォーム組と制服組。ネット越しで、両者が歓喜を分かち合ったのである。

「グラウンドとスタンドの選手が一体となって喜ぶ姿が見られ、最高に幸せです。言うまでもなく、コロナ禍で、すべての大学のチームが大変な中で今日まで進んできました。(ウチも)レギュラーだけではなく、補欠、スタッフ、皆の力で運営してきました。それが、私の誇りです」(菅原監督)

 指揮官は19年から全日本大学野球連盟の監督会会長を歴任している。全国の大学指導者と連携を取り、コロナ禍における部運営について共有してきた。昨年は全日本大学選手権、明治神宮大会とも中止。2年ぶりの開催となった明治神宮大会(中央学院大は19年ぶり3回目出場)を、特別な思いで戦っていた。

試合が終われば仲間


中央学院大・菅原監督(右)と慶大・堀井監督(左)は決勝後、固い握手を交わした


 多くの関係者の尽力により、グラウンドに立っている。当たり前が、当たり前ではないことを教えてくれる昨今。菅原監督は大会開催へのありがたさ、そして、相手校へのリスペクトを最大限の言葉で表現している。

「野球人として、素晴らしい集団。それが、慶應さんにはある。真っ向から勝負でき、素晴らしい試合をさせてくれた慶應義塾大学の選手たちには、感謝を申し上げたいです」

 指揮官の熱血指導は、学生に伝わっていた。主将・武田登生(4年・中央学院高)は言う。

「慶應さんは大学野球の原点(1888年創部)である、と監督から指導を受けてきました。慶應さんとこの舞台で対戦できたことは、うれしく思います。この先の人生においても、大きな自信になります」

 2021年の学生野球ラストゲーム。勝者と敗者に分かれたが、試合が終われば仲間である。ラグビーで言えば、ノーサイドの光景が広がっていた。うれし涙、悔し涙もあったが、すべてを出し切った両校の充実感あふれる表情は、見ている者を熱くした。

 慶大は東京六大学史上初の年間タイトル4冠(春、秋のリーグ戦、全日本大学選手権、明治神宮大会)を惜しくも逃したが、全力プレーを貫いた達成感があった。堀井監督は閉会式後、一塁内野席前で胴上げされた。ベンチ入りメンバーとスタンドにいた控え部員の前で、2021年の活動を締めくくったのである。

 2年ぶりの開催となった今大会。高校・大学の部で計19試合を無事に完走し、神宮の杜には、爽やかな空気が流れていた。

文=岡本朋祐 写真=矢野寿明

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