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王貞治、田淵幸一のホームラン王争いと世紀の落球/週べ回顧1973年編

 

 3年前に創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。バックナンバーを抜粋し、紹介する連載を時々掲載しています。

王のバットで2本塁打?


表紙は左が巨人長嶋茂雄、右が巨人・王貞治


 今回は『1973年8月20日盛夏特大号』。定価は120円。

 1973年8月4日、満員の甲子園球場の巨人戦で阪神田淵幸一が27、28号を連発。前日、27号の巨人・王貞治を目の前で抜き、打点でも1打点差をつけた。なお、田淵の巨人戦でのホームランは、これで14本。約半分となっている。

 ちなみに王の5日時点の打率は.332、田淵が.259。王の三冠王、田淵の2冠、どちらの可能性が高いのか話題になっていた。

 この両チームは、この年の1、2位であるが、4日時点では首位が中日、2ゲーム差で阪神、5.5ゲーム差の4位で巨人。別に首位攻防戦というわけではない。

 激しいホームラン王争いを続けていた王と田淵だが、特にぎすぎすしていたわけではない。これは年齢差に加え、田淵の天真爛漫な性格もあるだろう。

 8月1日、大洋戦で2本のホームランを打ったあとには、

「王さんにもらったバットで打った」と発言。

 実は神宮でのオールスターのあと、間違えて王のバットを持ち帰ってしまい、それを次の試合会場である大阪球場に移動後、王に告げると、

「いいよ、やるよ。ただ、試合用では使わず、練習用にでも使えたら使えよ」

 と言われていたという。

 しかし、田淵は感触がいいと使っての2本塁打だった。話を聞いた王が、

「これこそ本当に敵に塩を送るというヤツだな」と笑えば、田淵は「これからも投手によって使わせてもらいます」とまったく悪びれず話していた。

 また。この3連戦、阪神が2連勝のあと5日の3試合目、3回途中からリリーフした阪神・江夏豊の好投で2対1で迎えた9回表にドラマが生まれた。二死一、三塁で巨人の黒江透修が平凡なセンターフライ。しかし、阪神のセンター・池田祥浩が芝生に足をとられ転倒。三塁打となって勝利をふいにしてしまった。

「力投していた江夏をはじめ、チームのみんなにどうわびていいのか。自分自身があまりに情けないし、歯がゆい」

 生真面目な池田は、そう言って悔し涙を流した。のち「世紀の落球」「世紀のエラー」とも言われるが、実際には失策はついておらず、ボールにも触ってない。さらに言えば、2位と4位の戦いだ。この時点では、ワンオブゼムのゲームだった。

 では、また。

<次回に続く>

写真=BBM
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