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背番号物語

【背番号物語】阪神「#5」北村照文、新庄剛志らから現役の近本光司へ。実は名将の出世ナンバーだった?

 

新庄から平野、西岡へ


今季、最多安打に輝いた近本


 この2021年、178安打を放って最多安打のタイトルを獲得した近本光司が背負う阪神の「5」。近本はドラフト1位で入団した19年から「5」で活躍、1年目から159安打を放ち、36盗塁で盗塁王に。以降2年連続で盗塁王。21年は盗塁こそ減らしたものの安打を増やし、最多安打は初の戴冠となった。もともと選手をイロハ順に並べて背番号を割り当てるという実にザックリとしたスタートを切った阪神は、背番号の系譜もザックリとしていて、一部の例外を除いて、特に戦後、選手の入れ替わりが激しくなると物語も混沌としていくのだが、この「5」は比較的、早い段階で特徴が安定したナンバーのひとつといえる。誤解を恐れずザックリといえば、華やかな好打者の系譜だ。

背番号「5」で投手にも挑戦した新庄


 そんな選手の筆頭格どころか、ダントツで派手だったのは、最近なにかと世間を賑わせている新庄剛志だ。ドラフト5位で1990年に入団したときは「63」だったが、92年に外野手として一軍に定着。このときから真っ赤なリストバンドで注目を集めて、翌93年から「5」でベストナイン、ゴールデン・グラブのダブル受賞と不動のレギュラーに。その後も多方面から賛否両論を集めながらも物語は劇場化(?)していき、95年オフの引退騒動を皮切りに、99年の開幕に向けては野村克也監督の発案で投手と外野手の“二刀流”挑戦、シーズンに入ると敬遠球をサヨナラ打、翌2000年オフには無謀といわれながらのメジャー挑戦など、すべて「5」時代のものだ。

 新庄のメッツ移籍で「5」は空席となるも、01年シーズン途中に入団した助っ人のエバンス、その翌02年にはプロ2年目の沖原佳典が継承。後継者たちには新庄ほどの強烈なキャラクターを発揮する選手はいないが、沖原もレギュラー定着ならずとも印象的な活躍を見せた内野手だ。05年のシーズン途中から閉幕までは沖原とのトレードで楽天から来た内野手の前田忠節が着けたが、翌06年には外野手の濱中治掛布雅之らが着けていた「31」からの変更で20本塁打、75打点、打率.302と打撃3部門のキャリアハイを叩き出している。

 濱中らとの複数トレードで08年にオリックスから移籍してきて「5」を継承した平野恵一はガッツあふれるプレーで攻守に活躍、内野も外野も守って10年から2年連続で二塁手としてベストナイン、ゴールデン・グラブのダブル受賞。平野が12年オフにオリックスへ復帰すると、平野と同じ桐蔭学園高の出身でもある外野手の浅井良が「8」からの変更で後継者となるも1年で引退、これを14年に継承した助っ人のゴメスは打棒だけでなくパフォーマンスでもファンを魅了した。ゴメスの退団で17年に「7」からの変更で後継者となったのがムードメーキングでも名前を残す西岡剛。その退団で「5」となったのが現役の近本だ。

最長10年は打撃2冠の強打者


いぶし銀プレーヤーとして活躍した北村


 一方、新庄の前は職人タイプがリレーしていたが、決して地味ではない。前任の金森永時は名脇役ながら珍プレー好プレーを扱うテレビ番組では主役クラス。シーズン途中に移籍してきた88年には本塁打を捕球しながらも甲子園球場のラッキーゾーンへ転がり落ちるスゴ技を見せている。その前は金森とのトレードで西武へ移籍した外野手の北村照文。打撃ではバントなどの小技が持ち味だったが、守備では一転、派手なファインプレーで沸かせた。“鳥人”の異名もあった北村は1年目の80年から「5」を背負い、82年から2年連続でダイヤモンド・グラブ(現在のゴールデン・グラブ)に選ばれている。

 北村の前は2年間の欠番。77年まで背負っていたのはプロ1年目の71年から77年まで一貫して「5」を背負った外野手で名バイプレーヤーの末永正昭だ。その前の2年間は1年ずつの短期間リレーだが、そこまでの10年は派手。3年目の58年に「53」から「5」となり、60年には本塁打王、打点王の打撃2冠に輝いた内野手の藤本勝巳だ。藤本は歴代で初めて5年を超え、唯一10年に届いている。

 ちなみに「5」は他のチームで鶴岡一人西本幸雄ら多くの監督を輩出したナンバーでもある。阪神の「5」も新庄で監督への“出世”ナンバーとなった形だ。

【阪神】主な背番号5の選手
藤本勝巳(1958〜67)
北村照文(1980〜88)
新庄剛志(1992〜2000)
平野恵一(2008〜12)
近本光司(2019〜)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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