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長距離砲の輝きを見せた阪神・佐藤輝明 「来季三塁構想」で打撃に好影響も

 

前半戦は規格外の打撃



 阪神・佐藤輝明のプロ1年目は、栄光と試練を味わう「ジェットコースター」のような歩みだった。

 前半戦は規格外の打撃で首位を快走するチームに貢献した。4月9日のDeNA戦(横浜)で国吉佑樹(現ロッテ)のスライダーを振り抜き、横浜スタジアムの右中間の場外に消える特大アーチ。5月28日の西武戦(メットライフ)では2回に西武のエース・高橋光成のフォークに泳がされながらも片手1本でバックスクリーンへ11号ソロを放ち、6回に再び高橋から左中間へ12号ソロ。同点の9回に右中間最深部へ勝ち越しの13号決勝3ランで締めくくった。セ・リーグ新人で1試合3本塁打は1958年の長嶋茂雄(巨人)以来63年ぶりの快挙。久々に現れたスケールの大きい長距離砲は、プロ野球の話題の中心にいた。前半戦は84試合出場で打率.267、20本塁打、54打点とハイペースで本塁打を量産した。

 ところが、後半戦に入ると相手バッテリーも研究してくる。1年間フルに戦った経験がないだけに疲れも出たのだろう。ボール球に手を出し、打撃フォームを崩す。8月下旬から59打席連続無安打とスランプを味わった。スタメンから外れ、ファーム降格も経験。チームが優勝争いを繰り広げる中、戦力になれなかったことは本人も悔しかっただろう。

 野球評論家の廣岡朗氏は週刊ベースボールのコラムで、佐藤の打撃について以下のように分析している。

「シーズン前半は佐藤にしかできない打撃をしていた。体の軸を回転させて打っていたから良かった。佐藤には無意識のうちに臍下丹田(せいかたんでん、ヘソの下)に気を鎮める打法が備わっていたのだろう。その良かったフォームを、いまは分解して打とうとしている。良かったときの佐藤は、打つ瞬間にバットが消えた。それほどスイングスピードが速かった。打席で突っ立って流した打球がそのままレフトスタンドへ飛び込んでいく。すごいヤツだなと唸らされた。それが、調子を崩してからはバットスイングが見えるようになっていた」

「頭を捕手のほうに残すのはいいが、では重心はどうなるのか。以前のこの欄でも書いたが、私なら後ろから佐藤の両肩を羽交い絞めにして、『俺を投げ飛ばせ』と言ってみる。佐藤が頭だけ捕手のほうに残していたら、羽交い絞めにした側の思うツボだ。しかし、佐藤が重心を下に置いて踏ん張ったら、羽交い絞めにしたほうが反対に吹っ飛ばされる。それだけ重心というのは大切なのだ。その重心を疎かにして頭を後ろに残していたら倒れてしまう。そんな状態で打って、力が出るだろうか。だから佐藤は苦労したのだ」

本職の三塁だと……


4月9日のDeNA戦(横浜)では特大の本塁打を放った


 プロの厳しさを味わったが、広い甲子園を本拠地に新人左打者最多の24本塁打をマーク。75年ぶりに記録を更新したのは立派な快挙だ。126試合出場で打率.238、24本塁打、64打点。課題とともに手応えもつかんだはずだ。

 注目されるのは来季のポジションだ。本職は三塁だが、レギュラーの大山悠輔が控えるチーム編成で今季は右翼にコンバートされた。だが、大山が故障で戦線離脱した際は三塁を守り、軽快なフットワークと強肩、安定したスローイングで安心して見ていられた。

「佐藤はスローイングを見ても内野手です。三塁を守っていたときのほうが生き生きしていた。打撃も三塁でスタメン出場したほうが良い結果が出ている。守備で良いリズムを作ることで打撃にも良い影響を及ぼしているのでしょう」(スポーツ紙記者)

 守備と打撃は連動する。来季は佐藤をどの守備位置で起用するのがチームにとって最も得策か。矢野燿大監督の決断が注目される。

写真=BBM
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