ヤクルトの日本一で幕を閉じた2021年のプロ野球。選手たちはつかの間のオフに入っているが、来季へ向けての“戦い”はすでに始まっている。ドラフト、FA、新外国人、トレードなどで目論む戦力アップ。パ・リーグ6球団は現時点でどのようにチームの弱点を補っているのだろうか。 福岡ソフトバンクホークス
FA権を行使した中日・又吉
ドラフトでは本命の
風間球打(明桜高)を1本釣りするなど狙いどおりの補強ができた。ただし、彼らは育成重視。来春キャンプA組(一軍)スタートが内定している指名2位の
正木智也(慶大)同4位の
野村勇(NTT西日本)が1年目から出てくる可能性はあるものの、戦力としては未知数だ。その点では今オフ、3年ぶりにFA市場に乗り出す動きが。国内FA権を行使した中日の
又吉克樹に対し、三笠杉彦GMは「大変素晴らしい投手だと調査では上がっている。(12月8日の)公示を受けてから具体的な行動を考えたい」とコメント。3年前は
西勇輝(当時
オリックス)、
浅村栄斗(当時
楽天)のW獲りを狙うも惨敗しているだけに、好条件で迎え入れられるか。
また、外国人選手では、すでにA.
アルメンタ、M.
フェリックス、F.
ヘラルディーノ、M.
シモンといった16〜21歳の伸び盛りを、育成選手として獲得。「外国人も育てる」という新たな試みに着手したほか、支配下選手ではMLB通算109本塁打、966安打の両打ち内野手、
フレディ・ガルビス(フィリーズ)獲得のウワサが。とは言え、L.
モイネロ、Y.
グラシアル、A.
デスパイネがそろって残留濃厚というニュースのほうがチームにとっては大きなことだろう。
オリックス・バファローズ
オリックスが獲得調査を進めているバレラ[写真=Getty Images]
若手の積極起用で一軍メンバーも20代が中心。生え抜き育成に力を注ぐ球団の補強は主に外国人選手だ。
アダム・ジョーンズ、
スティーブン・モヤ、
グレン・スパークマンと来季の契約を結ばないことが濃厚で、救援陣強化にブレーブス3Aの
ジェシー・ビドルに獲得調査に動いている模様。ビドルは196センチ左腕で、鋭いカーブが武器の奪三振能力に長ける。野手ではブルージェイズの内野手、ブレイビック・バレラを調査。今季39試合に出場し、打率.253、1本塁打、15打点をマーク、二塁や三塁など複数ポジションを守れるスイッチヒッターだ。ほかにもブルペン補強にカブスのトレバー・メギル、パイレーツの
カイル・ケラーらもリストアップしている模様だ。
千葉ロッテマリーンズ
ここまで補強の動きはなく、ドラフトで獲得した支配下5人が戦力となる。中でも3位・
廣畑敦也(三菱自動車倉敷オーシャンズ)、5位・
八木彬(三菱重工West)の社会人右腕2人は即戦力の期待大。助っ人の
フランク・ハーマン、
ホセ・フローレスが去る中で、ブルペンに厚みを与えそうだ。野手では
レオネス・マーティン、ブランドン・レアードが残留したのは大きい。打線の軸を形成する2人の助っ人が来季も得点源になるのは間違いない。現状は“残留”が大きな補強だ。
東北楽天ゴールデンイーグルス
今季は山崎らが台頭した楽天。今後は生え抜きの育成がメーンに
2017年に
岸孝之、19年に浅村栄斗、20年に
涌井秀章、
鈴木大地と、パ・リーグ他球団の大物選手を獲得してきた楽天だが、補強から育成へ舵を切るようだ。
石井一久GM兼任監督は11月にこう話していた。「今の流れで言うと、そこ(補強)の部分はしなくていいフェーズ(局面)にチームが入ってきた」。若手選手を積極起用、場数を踏ませて成長を促してきた。その結果、投手では10勝をマークした
瀧中瞭太や、中継ぎでフル回転を見せた
安楽智大や
西口直人が台頭。野手でも後半戦で
山崎剛が一番に定着した。10月のドラフトで高校生野手を多く指名したのもそのため。生え抜きの育成に力を注ぐ。
北海道日本ハムファイターズ
ドラフト1位の天理高・達
「二軍の選手を育て上げて、補強もそんなにしない。いい選手を獲ってくる野球はあんまり面白くないと思う」と言う
新庄剛志監督の方針どおり、FAなどで大型補強はせず現有戦力を鍛え上げて戦うことになるだろう。新外国人の補強としては、メジャー通算56本塁打を放っている右の長距離砲、
レナート・ヌニエス(ブリュワーズ3A)に加え12月6日、新たに2020年にパイレーツでメジャー初昇格した198センチ116キロの巨漢右腕、
コディ・ポンセの獲得を発表。5日には12選手の新人入団発表も行われた。「(ダルビッシュ)有より体もできているし、トークもしっかりしている」とBIGBOSSにお墨付きをもらった、ドラフト1位の194センチ右腕・
達孝太を筆頭に、新人選手にも即戦力のチャンスはある。
埼玉西武ライオンズ
新外国人のオグレディ[写真=Getty Images]
42年ぶりの最下位からの逆襲に欠かせない選手として期待が大きいのはドラフト1、2位コンビだ。1位・
隅田知一郎(西日本工大)、2位・
佐藤隼輔(筑波大)は即戦力左腕として投手力アップの力となれる逸材だ。さらに今季所属した5人の外国人選手はすべて自由契約に。先発、リリーフ、大砲などチームの核となるべき外国人を5人ほど獲得予定としていたが、まずは投手の
ディートリック・エンス(レイズ)、外野手のブライアン・オグレディ(パドレス)を獲得。エンスは最速156キロを誇る左腕で先発として起用予定。オグレディは左打ちの中距離ヒッター。今季3Aでは打率.281、15本塁打、46打点、10盗塁、出塁率.366をマークした。
写真=BBM