週刊ベースボールONLINE

背番号物語

【背番号物語】ロッテ「#63」和田康士朗が盗塁王に。“新庄劇場”の印象も強いが…ロッテでは投打の出世ナンバー

 

24打席で24盗塁、異色の盗塁王


今季、初めての盗塁王に輝いた和田


 この2021年にセ・リーグで最多安打のタイトルを獲得した近本光司が着けている阪神の「5」は紹介したばかりだが、この背番号の系譜にいるのが新庄剛志。ただ、新庄はプロ入りした当初と日本ハムでの引退試合では「63」でプレーしている。これによって、プロ野球の「63」といえば、いわゆる“新庄劇場”のオープニングとフィナーレを飾った背番号というインパクトも強い。とはいえ、新庄が時の人だからということで今回、ロッテの「63」を紹介するわけではない。奇しくも、この21年には「63」のタイトルホルダーも誕生した。4人がパ・リーグで盗塁王のタイトルを分け合う異例のシーズンとなったが、そのうちの1人、ロッテの和田康士朗が背負うのが「63」だ。

 育成ドラフト1位で18年に入団した和田。当初は「122」と3ケタの背番号だったが、新型コロナウイルス感染症の影響で開幕が大幅に遅れた20年6月に支配下登録され、「63」で“開幕一軍”を果たすと、いきなり71試合の出場ながら23盗塁と持ち味を発揮した。この21年は出場が96試合と増えたが、打席の数は激減。それでも24打席で同数の24盗塁を決めるという離れ業を見せた。盗塁王4人も異例なら、その中でも異色なのが和田の存在だ。ちなみに、一般的な「63」は指導者の背番号から新庄も含めた出世ナンバーへと進化した背番号で、この傾向はロッテも同様。ただ、投手も打者も「63」で出世しているロッテは少数派だ。

 ロッテは2リーグ制となった1950年にプロ野球へ参加して、1年目からリーグ優勝、日本一に輝いた毎日が起源だが、最も大きい数字だったのは「41」。初めて「63」が登場したのはチームが大毎となった58年で、山田潔コーチが初代だ。指導者では、チームがロッテとなってからの77年から86年までの10年間、コーチや二軍監督としてチームを支えた徳武定之が長い。

 ドラフト6位で87年に入団した右腕の大美健二からは選手の系譜になりかけたものの、大美の引退で91年の1年だけ指導者としては異例ながら徳武が「63」に返り咲き。通算11年は系譜の最長タイとなる。翌92年に徳武は中日へ。ロッテの「63」は左腕の小林至が継承した。94年に後継者となったのが大美と同じドラフト6位で入団した右腕の小野晋吾。なかなか芽が出なかった小野だが、この小野こそがロッテの「63」を出世ナンバーに進化させた立役者だった。

ドラフト6位から出世した小野と種市


「63」で00年に最高勝率に輝いた小野


 97年に一軍デビュー、99年に初勝利を挙げた小野だが、ブレークは2000年だ。日曜日の先発登板で勝敗のつかなかった3試合を挟む9連勝。最終的には13勝5敗、リーグトップの勝率.722をマークして、“サンデー晋吾”の異名を取った。ロッテで日曜日に好投した右腕といえば右ヒジ手術から85年に復活した“サンデー兆治”こと村田兆治。その後継者として、小野は01年から「29」を背負い、「63」は欠番に。ただ、翌02年に小野と同じ学年で阪神から来た右腕の井上貴朗が継承も2年で引退、04年には同じく右腕で巨人から来た谷浩弥が後継者となるも1年で引退。一転、ラストシーンの背番号という雰囲気が漂うようになってしまう。

 そんなロッテの「63」を、長い時間をかけて出世ナンバーに戻したのは青松敬鎔(慶侑)だったのかもしれない。1年目に谷から「63」を継承した青松は捕手で、通算26試合の出場、プロ11年目の15年に初本塁打を放った苦労人だが、キャリアを通して「63」を背負い続けて11年間。期間では徳武に並ぶ最長タイだ。

 青松の引退で後継者となったのが右腕の種市篤暉。大美や小野と同じドラフト6位で17年に入団した種市は、3年目の19年に先発の一角としてプロ初勝利を含む8勝。日本人の投手として最多を更新する23イニング連続奪三振もあった。そのオフに種市は現在の「16」に変更。これを翌20年に継承したのが育成から頭角を現した外野手の和田だった。

 同じ60番台では和田と同じ外野手で、やはり育成から台頭、通算2501打席で本塁打ゼロという“快挙”もあった「66」の岡田幸文もいるロッテ。新たな“育成の星”和田は、さらなる輝きを放つのか。

【ロッテ】主な背番号63の選手
徳武定之(二軍監督ほか。1977〜86)
小野晋吾(1994〜2000)
青松敬鎔(2005〜16)
種市篤暉(2017〜19)
和田康士朗(2020〜)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング