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東京ガスはなぜ都市対抗の頂点に立てたのか。2つのキーワードを徹底して東京ドームで5連勝

 

東京ガス94年の歴史で初優勝


東京ガスを率いて4年目の山口太輔監督[44歳]は、悲願の都市対抗初制覇へと導いた。現役時代は時習館高[愛知]、慶大、東京ガスを通じて内野手として活躍した


 1927(昭和2)年創部の東京ガス(東京都)が都市対抗野球大会決勝(12月9日)でHonda熊本を下し(6対5)、初優勝を遂げた。

 就任4年目の山口太輔監督(慶大)は試合後、東京ドームで感謝の言葉を述べている。

「東京ガス94年の歴史で、たまたま、この場にいるメンバーで初優勝できましたが、OBの皆さんはじめ、関係者の築いてきたものが94年にして達成できました。うれしく思います」

 都市対抗制覇チームが手にできる、栄光の黒獅子旗。東京ガスはなぜ、奪取することができたのか。

 今年のチームスローガンは「氣〜エネルギーで変革を起こせ!〜」。しかし、この言葉を体現するには、相当な苦労があった。

 6月1日。東京ガスは社会人野球日本選手権関東最終予選初戦(2回戦)で日立製作所に1対7で敗退し、本大会出場を逃した。社会人野球日本選手権は都市対抗と並ぶ「社会人二大大会」の位置づけ。東京ガスは2019、20年と都市対抗出場を逃しており、まさしく、崖っぷちに立たされる状況となった。

 チームはどん底である。そこで、山口監督は動いた。

「このままで良いのか、と。野球と向き合い、自分自身と向き合って、心・技・体、すべてを変革しよう、と」

 変革。もう一度、チームスローガンに立ち返り、真摯に白球を追った。

 都市対抗東京地区二次予選は初戦から3連勝。第1代表で、3年ぶり22回目の本大会出場を決めた。

 キーワードは2つ。耐えることと、粘ること。攻守とも、この合言葉を徹底し、東京ドームで5連勝。社会人野球の頂点に立った。

観衆は拍手でナインを後押し


 新型コロナ禍において、昨年は都市対抗の風物詩である応援団による応援は取りやめ。今年は条件付きで2年ぶりに復活し、華やかなリーダー、チアリーダー、吹奏楽部による熱血応援が展開された。新型コロナウイルスの感染予防対策ガイドラインにより、観衆は声を出せないが、拍手でナインを後押しした。

 MVPにあたる橋戸賞を受賞したエース右腕・臼井浩(中央学院大)は三塁側のスタンドに向かって頭を下げた。臼井は1回戦、準々決勝、準決勝では救援として試合を締めると、決勝は山口監督に先発を志願。気迫の投球で7回1失点と、頂上決戦で勝利投手となった。

「勝てなかった時期を乗り越えて、チームを勝たせる投手になれたことはうれしいです。選手、スタッフだけでなく、(スタンドからの)応援があっての勝利だと思います」

 山口監督は、夢心地だった。

「皆さんが喜んでいる光景を見るためにやってきた。本当にうれしいです」

 社員の士気高揚。企業が野球部を持つ、存在意義の一つである。一体感の醸成。今大会、頂点に立った東京ガスだけでなく、出場全32チームが新型コロナ禍の都市対抗を全力で駆け抜け、会社に活力を与えたことは間違いない。

文=岡本朋祐 写真=矢野寿明
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