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背番号物語

【背番号物語】阪神「#63」新庄剛志がブレークしたラッキーナンバーは監督としてはアンラッキー?

 

世紀をまたいで捕手がリレー


阪神で当初、背番号「63」を着けていた新庄


 阪神の「5」、ロッテの「63」と紹介してきて、阪神の「63」に触れないわけにもいくまい。時の人(?)新庄剛志が阪神でブレークしたときのナンバーで、日本ハムで現役を引退するときには、わざわざ「63」を着けていた渡部龍一から1日だけ譲り受けて、引退セレモニーでは「63」のユニフォームをグラウンドに置くパフォーマンスもあった。

 とはいえ、新庄も阪神では「5」、日本ハムでは監督としても背負う「1」の印象のほうが強い。ロッテも「63」でも触れたが、投打の出世ナンバーといえる「63」で、阪神で最初にブレークしたのは新庄だ。新庄が阪神に指名されたのは1989年の秋、ドラフト5位だった。のちに黄金ドラフトと評価されるも、当時は「近年にない不作」という評価で、新庄も下馬評では“不作”の1人。ちなみに、このとき8球団もの指名が競合したのは野茂英雄。ほとんど注目されていなかった新庄だが、入団会見にはソリの入った角刈りで現れ、「僕はサッカーが好きだったんで、あまりプロ野球は興味なかったんです」と言い放って周囲を唖然とさせた。後年の“新庄劇場”よりも、かなりナチュラルだったが、才能の片鱗を見せたともいえるかもしれない。

 一軍デビューは2年目の91年、シーズン終盤に初打席初安打初打点も、13試合の出場で2安打のみ。当時は遊撃手で、打撃よりも深い守備位置からの強肩に注目が集まった。ブレークは翌92年だ。5月に入って一軍に合流すると、初スタメン初打席初球初本塁打。これが決勝打にもなり、新庄も「ついてると自分でも思います」と声を弾ませた。そこから外野へ回って、中堅手としてレギュラー定着。ほぼ同時にブレークした「00」の亀山努と“カメシン・コンビ”と呼ばれて、大フィーバーを巻き起こした。85年の日本一、いわゆる“猛虎フィーバー”から一転、“ダメ虎”と揶揄されていた阪神も躍進。最終的には2位タイに終わったが、暗黒時代ともいわれる90年代で唯一、輝きを放ったシーズンとなった。

 新庄も規定打席には届かなかったが95試合の出場で11本塁打、46打点。その翌93年には「63」から離脱、「5」でメジャーに挑戦する2000年までプレーしている。93年からは片山大樹が8年、21世紀に入って狩野恵輔が6年と捕手が阪神の「63」をリレー。新庄と同じくプロ1年目から「63」を背負った片山は一軍出場のないままブルペン捕手に転じたが、着けた期間で歴代の最長となる。

指導者に豪華な顔ぶれも……


 やはりプロ1年目から「63」を背負った狩野は07年に変更した「99」で台頭。内野手として入団した大城祐二が「63」を継承したため捕手の系譜にはならず、11年に横浜(現在のDeNA)から来た左腕で歴戦の加藤康介が継承、13年にセットアッパーとして復活を遂げた。16年から現在に至るまで「63」を背負うのは、新庄と同じ外野手の板山祐太郎だ。同じくプロ1年目から「63」でプレーしている板山は1年目から40試合に出場。新庄ほど派手ではなかったものの、初スタメン初安打初打点もあった。ただ、この21年は初の開幕一軍も、定着はならず。まだまだ新庄の印象が強く残る阪神の「63」が出世ナンバーの系譜になるのには、板山のブレークが不可欠となる。

 一方、阪神の「63」が初めて登場したのは1961年。投手の山下一義が初代だったが、在籍は1年のみ。翌62年からは指導者の系譜となった。選手の系譜となったのは71年の1年だけ着けた山田敏彦からで、それまでの「63」の指導者には青田昇杉下茂藤村隆男山田伝と、1リーグ時代を選手として支えた豪華な顔ぶれが並ぶ。

 このうち、阪神を監督として指揮を執ったのが杉下だ。中日でエースナンバー「20」の道筋をつけた杉下だが、阪神のコーチとして「63」を着け、そのまま66年に監督に昇格も、シーズン途中で休養。68年には中日の監督としても「63」を着けたが、やはりシーズン途中で休養に追い込まれている。「63」は監督の背番号としては“アンラッキー”ナンバーといえるかもしれない。新庄監督が日本ハムの「1」を選手に譲って「63」を着けたとき、この潮流も変わるか。

【阪神】主な背番号63の選手
杉下茂(監督ほか。1964〜66)
新庄剛志(1990〜92)
狩野恵輔(2001〜06)
加藤康介(2011〜15)
板山祐太郎(2016〜)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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