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背番号物語

【背番号物語】広島「#63&#64」丸、田中広輔、西川、そして會澤。平成の黄金時代は上田利治がルーツ?

 

07年に「64」を背負った會澤


広島入団時に「64」を背負っていた會澤


 投打の出世ナンバーとして「63」の紹介を続けてきたが、この2021年に盗塁王の和田康士朗を輩出したロッテや、1990年代に新庄剛志がブレークを果たした阪神の一方で、21世紀に12球団で最強の出世ナンバーとしているのは広島だ。21世紀の広島では「63」に続く「64」も出世ナンバー。なかなか自らの象徴にまで昇華させた選手が登場しない「64」は、古くから捕手が多い傾向を持つ背番号だ。

 広島の歴史が始まったのは、現在の2リーグ制となった1950年で、このとき最も大きかったのは「45」だった。60番台の背番号が初めて登場したのは58年で、このとき「63」が、「64」も翌59年に指導者の背番号として系譜をスタートさせた。この時期は「60」が監督ナンバー、60番台は「60」に続く指導者ナンバーとなることが多く、広島でも「63」の初代は阪神の「63」でも触れた藤村隆男で、「64」は広島で現役生活を終えた金山次郎だった。

 その後も、ともに指導者によるリレーが長く続いたが、この両方を背負ったのが上田利治コーチ。のちに阪急(現在のオリックス)黄金時代の監督として一時代を築いた上田だが、選手としては広島ひと筋の捕手。現役は3年で引退して指導者に転じ、その1年目の62年が「64」、翌63年には「62」となるも、その翌64年には「63」と、1年ずつ背番号を変更。65年には指導者の原点となった「64」に戻して、67年までの3年間を過ごしている。

 指導者から選手の系譜へとシフトしていったのは80年代、“昭和の黄金時代”ともいえる時期に入ってからだが、それまでの間に「63」には打撃コーチとして手腕を発揮した関根潤三や監督も代行した森永勝也、「64」には広島が初のリーグ優勝を果たした75年に「70」の監督となったルーツがいた。ルーツは監督こそ早々に退任したものの、悲願への道筋をつけ、チームカラーに赤を採用したことでも知られる功労者。その前年の74年に来日して初めて広島の指導者として背負ったのが「64」だった。

 ただ、ともに選手の背番号としてグラウンドに輝くのには時間を要した。1年目の99年から「64」を背負っていた井生崇光が2005年に一軍デビュー。内野も外野も守るユーティリティーとして機能して、自己最多の74試合に出場した翌06年にはマスクもかぶり、その翌07年には広島が発祥の「0」に。その07年、「64」の後継者となったのが捕手の會澤翼だ。

丸の「63」が先にブレーク


広島入団時に「63」を背負っていた丸


 やや「64」に出遅れた感もある「63」だが、井生よりも前に「63」を背負い、1年目の1996年から2006年まで過ごした捕手の鈴衛佑規が歴代で最長の11年となる。07年は左腕の仁部智が1年だけ着けて現役を引退。翌08年に「63」を継承したのが丸佳浩だ。丸の一軍デビューは3年目の10年。「64」の會澤は丸よりも早く09年に一軍を経験していたが、ブレークは「63」の丸が先だ。

 11年に外野のレギュラーに定着、13年には29盗塁で盗塁王に輝いて、オフに「9」へと出世。翌14年に丸の後継者となったのが田中広輔だ。即戦力として1年目から110試合に出場した田中は、2年目の15年には遊撃のレギュラーとして初めて規定打席にも到達した。田中は2年で「2」に出世。広島が25年ぶりのリーグ優勝を飾った16年に田中から「63」を受け継いだのがプロ1年目、現役の西川龍馬だった。

 田中の「63」ラストイヤーとなった15年に捕手ナンバーの「27」へと転じたのが會澤。「64」は捕手の多田大輔が継承するも3年で引退、18年には左腕の中村恭平が「22」からの変更で後継者となったが、この21年オフに退団している。

 丸の去った広島で打線の中軸を担う西川の「63」と、新人で捕手の高木翔斗に継承されることが決まった「64」。平成の時代に會澤と丸から始まった背番号の物語は、令和の今も続いているはずだ。

【広島】主な背番号63の選手
藤村隆男(コーチ。1958〜62)
鈴衛佑規(1996〜2006)
丸佳浩(2008〜13)
田中広輔(2014〜15)
西川龍馬(2016〜)

【広島】主な背番号64の選手
金山次郎(コーチ。1959〜61)
ルーツ(コーチ。1974)
井生崇光(1999〜2006)
會澤翼(2007〜14)
中村恭平(2018〜21)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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