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金田ロッテは本拠地なき過密移動をどうしのいだのか/週べ回顧1973年編

 

 3年前に創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。バックナンバーを抜粋し、紹介する連載を時々掲載しています。

仙台で快適に過ごすために専属の料理人を


県営宮城球場


 今回は『1973年9月3日号』。定価は100円。

「いくら自分のところの球場がないといったって、あまりにもひどいスケジュールや。ロード、ロード、ロード……。いったいロッテのことをリーグはどう思っているんや。殺す気かいな」

 後期日程を見たロッテ・金田正一監督の嘆きだ。

 後期の出だしから紹介してみる。

 7月27、28日、神宮での日拓2連戦の翌30日、東京から福岡へ。31日から8月2日まで太平洋3連戦。

 3日、福岡から仙台に移動。4日から9日まで日拓、阪急と各3連戦(5、6日オフ)。
 10日、仙台から八戸移動。11日に近鉄と試合をし、そのあと青森に移動。
 12日、青森で近鉄とダブルヘッダー。
 13日、青森から東京へ。

 9月は笑ってしまうほどすごい。

 9月3日、東京から大阪へ。4日から6日まで近鉄3連戦。
 7日、大阪から仙台へ。8日から2日間で南海3連戦(9日がダブル)。
 10日、仙台から福岡へ。11日から13日まで太平洋3連戦。
 14日、福岡から大阪へ。同夜から16日まで南海4連戦(15日ダブル)。
 17日、大阪から仙台へ。18日から2日間で近鉄3連戦(19日ダブル)。
 20日、仙台から京都へ。21日から23日まで西京極で太平洋4連戦(23日ダブル)。
 24日、京都から仙台へ。25日から2日間で近鉄3連戦(26日ダブル)。
 27日、仙台から大阪へ。28日から30日まで阪急4連戦。

 金田監督は、「後期のロッテは、この9月の遠征が大きなポイントになる。生きるも死ぬも、このバカげた遠征次第じゃ」と言った。

 若い読者の方は50年近く前に移動の大変さ、基本大部屋の遠征の苦労が分からないかもしれない。加えて、ロッテにとって仙台は準本拠地でホームではあるのだが、決してホームタウンではなかった。みな東京に家があり、仙台もまた遠征だったのだ。

 ただ、金田監督は指をくわえている人じゃない。

 7月10日からの動きを見てみる。

 まず10日、夕方全選手が八戸入り。主催の近鉄が指定した古い旅館の玄関をくぐり、中を一回りしたところで金田監督が、「ダメだ。すぐ宿を変える。マネジャー、すぐ手配しなさい」と指示。

「こんな蒸し暑い旅館で寝られるわけがない。寝不足になってしまって満足なプレーができるわけがないやろ」

 この旅館Kにはクーラーがなく、北国とは言え、部屋の戸を閉めると途端に湿気がむわっとした。金田監督の指示は絶対だ。すぐマネジャーが冷房完備のホテルを手配し、監督、主力選手が移動。コーチ陣、控え選手、裏方さんらが旅館に残った。

 実際、「夜中の3時過ぎまで暑くて寝られなかった」状態だったという。

 ただ、金田監督は「投手は体を冷やしてはいかん」と冷房を禁止していたという話もある。このあたりの整合性は、このあとの回で出るのかもしれないし、出ないのかもしれない。あくまで過去の週べの記事を抜粋し、紹介する連載なので、そのあたりはっきりしなくてもご勘弁いただきたい。

 さらに八戸から青森まで移動のためクーラー付きのバスを借りていたが、バスなら2時間半、特急列車なら1時間と聞き、またも天の一声。特急移動に変更し、クーラーつきのバスは旅館組と報道陣が乗った。

 ただ、このクーラーつきのバスも金田監督のリクエストだったらしい。地方球場は着替えのためのロッカールームも手狭。バスをロッカールーム代わりにしようという発想だ。
 
 加えて仙台での居心地をいかに快適にするかも考えた。

 まずは食べ物からだ。32歳の根岸さんを専属の料理人として仙台に同行させた。この人はロッテ会館の中華料理店のコックさんだった。後期になって仙台の選手一人の宿泊予算も5000円から5500円にアップし、夕食に根岸さんが腕をふるった2品を追加させた。

 さらに「仙台での戦いがロッテの命運を握っている。だから東京にいるような雰囲気をつくって、どっしり落ち着きたいと思ってね」と仙台での門限も1時間半ほど遅らせ、ストレス軽減を考えた。

 同時に金田監督が遠征対策で行ったのが、移動日にも必ず練習をするという施策だ。

「汗を出すだけでもいい。まるっきり体を休ませてしまうと逆に次の日、苦しくなるんや」(金田監督)

 再び7月の遠征を例に出すが、10日は仙台で練習してから八戸に移動、13日、青森から東京に帰る日は昼間練習し、夕方4時の飛行機で東京といった具合だ。

 では、また。

<次回に続く>

写真=BBM
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