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川口和久WEBコラム

温室ジャイアンツと雑草ヤクルトはどっちが強い?/川口和久WEBコラム

 

外にあるブルペンの利点



 ヤクルトの田口麗斗が現状維持の7000万円(推定)で契約更改を終えた。
 巨人から移籍1年目、先発、抑えで活躍はしたが、成績は5勝9敗、防御率4.09でしょ。あいつの実力からすると物足りない。

 田口は俺が巨人のコーチの最終年に入団した。明るく、物おじせず、マウンド度胸も満点。上背はないが、球のキレがある、いわゆる天才肌の選手だ。相手を小馬鹿にしたような投球には大物感があった。

 ただ、体質もあってか太りやすく、そうなると体のキレが落ち、器用だからこそ小手先のピッチングをしてしまうときがあった。
 だから、これは解説者になってからだけど、春季キャンプで重そうな体をしている田口を見て「もっと走れよ」と言ったことがある。もったいないな、と思ってね。

 ヤクルトというチームは勝敗の統計は分からないが、昔から地方球場でいい試合をするチームだった。不思議に思って一度、ヤクルトの選手に聞いたことがあるが、
「神宮もブルペンが外だからじゃないですか」
 と言っていた。

 地方球場はブルペンが外にあることが多いし、ロッカールームの設備も整っていないことが多い。それは神宮と同じ。大学野球と併用の球場ということもあるのか設備面は、ほかの本拠地球場から見劣りする。

 マウンドがグラウンドにあるかどうかは、いいことと悪いことがある。閉鎖されたブルペンは試合状況をモニターでしか見られないから集中できるし、相手側に流れが行っていても、比較的冷静に投球に入っていける。

 グラウンドのブルペンはお客さんからも見られているし、ベンチの声も聞こえる。試合の中に入っていきやすいからイケイケのときは「よし」となる。押されているときは必要以上に緊張しちゃうが、だからこそ野手が投手を盛り立て、チームの一体感が生まれることもある。
 それがいいほうに出たのが、今年のヤクルトだったのかもしれない。

 で、俺が何を言いたいかというと、田口が食事面の改善を巨人を例に挙げて求めた、という個所なんだ。ここ2年ほどはコロナで外出できなかったと思うから球場や遠征先での食事はより気になったんだろね。結婚したあと「幸せ太りです」とニコニコしていた田口も大人になったなとほめるべきかもしれないが、逆にどうだろう。

 ヤクルトは日本一、巨人は3位。恵まれ過ぎて温室育ちみたいな環境だから巨人は優勝できなかったのかもしれない。田口、プロにはハングリーさも必要かもしれんよ。
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